平成29年度 第102回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 228,229

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問 228  正答率 : 77.2%
問 229  正答率 : 63.9%

 国家試験問題

国家試験問題
69歳女性。胃がんの手術後の入院中に、医師、看護師、管理栄養士及び薬剤師で構成されたNST(Nutrition Support Team)による患者カンファレンスが行われた結果、脂肪乳剤輸液(10%、250 mL)の投与が開始された。

問228(実務)
脂肪乳剤輸液に関する記述のうち、誤っているのはどれか。2つ選べ。

1 脂肪乳剤は急速大量投与が必要であるため、1時間以内に全量を投与する。


2 血管外に漏出すると皮膚壊死や皮膚潰瘍を起こす可能性がある。


3 他の注射剤を混合して投与可能である。


4 ポリカーボネート製の三方活栓にひび割れを生じさせることがあるので、漏れがないように注意する。


5 可塑剤としてDEHP[フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)]を含まない輸液セットを使用する。




問229(衛生)
脂肪乳剤輸液に用いられる脂質に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 脂肪乳剤中の油脂には必須脂肪酸のリノール酸及びα−リノレン酸が含まれている。


2 中鎖脂肪酸は長鎖脂肪酸に比べてエネルギーに変換されにくいので、中鎖脂肪酸を含む油脂は脂肪乳剤としては用いられない。


3 脂肪乳剤中の脂質1 gあたりのエネルギー量は約9 kcalである。


4 脂肪乳剤中のトリアシルグリセロールは、リポタンパク質リパーゼによりモノアシルグリセロールと脂肪酸に分解され組織に吸収される。


5 脂肪乳剤には乳化剤としてコレステロールが含まれている。

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問 228    
問 229    

 e-REC解説

問228 解答 1、3

1 誤っている
脂肪乳剤は、通常1日500 mL(大豆油として10%)を3時間以上かけて点滴静注する。脂肪乳剤の投与速度が速すぎると体内での代謝が間に合わず、血中に停滞した脂肪乳剤粒子は異物として細網内皮系に取り込まれ、貪食細胞の機能低下、感染症などを引き起こすおそれがある。

2 正しい
脂肪乳剤の血管外漏出が原因と考えられる皮膚壊死、潰瘍形成が報告されているので、点滴部位の観察を十分に行い、発赤、浸潤、腫脹などの血管外漏出の兆候が現れた場合には、直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこととされている。

3 誤っている
脂肪乳剤を他の注射剤と混合すると、脂肪乳剤の安定性が損なわれ、粒子サイズの粗大化や凝集等の変化が現れるため、本剤は、他の注射剤と混合せずに単独で投与することとされている。

4 正しい
脂肪乳剤は、接合部がポリカーボネート製の輸液セット等で使用した場合、その接合部にひび割れが生じ、血液及び薬液漏れ、空気混入などの可能性があるので、漏れがないように注意する。

5 正しい
可塑剤のDEHP[フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)]は油に溶けやすいため、DEHPを含むポリ塩化ビニル製の輸液セット等を使用した場合、脂肪乳剤に含まれる大豆油やレシチンによりDEHPが製剤中に溶出することがある。そのため、DEHP[フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)]を含まない輸液セットを使用することが望ましい。


問229 解答 1、3

1 正
必須脂肪酸のリノール酸やα−リノレン酸などは体内で合成されないか、合成されても必要量に達しない脂肪酸である。脂肪乳剤中の油脂には、リノール酸及びα−リノレン酸が約60%含まれており、長期にわたる高カロリー輸液療法において必須脂肪酸の補給ができる。

2 誤
脂肪酸はミトコンドリア内に取り込まれ代謝を受けATPを生成する。長鎖脂肪酸は、ミトコンドリア内膜を通過する際にカルニチンを必要とするが、中鎖脂肪酸はミトコンドリア内膜を通過する際にカルニチンを必要としないため、中鎖脂肪酸は長鎖脂肪酸に比べ代謝を受けやすくエネルギーに変換されやすい。

3 正
脂肪乳剤中の脂質1 gを摂取した際に体内で得られるエネルギー量は約9 kcalである。なお、糖質、タンパク質は約4 kcalである。

4 誤
脂肪乳剤中のトリアシルグリセロールは、リポタンパク質リパーゼによりグリセロールと遊離脂肪酸に分解され、組織に吸収される。

5 誤
脂肪乳剤には、乳化剤としてレシチンが含まれている。レシチンは水と油の両方の性質をもっている両親媒性物質であるため、脂肪乳剤を乳化させるために使用されている。

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