平成29年度 第102回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 232,233

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問 232  正答率 : 80.6%
問 233  正答率 : 69.5%

 国家試験問題

国家試験問題
85歳男性。在宅にて要介護度5の寝たきり状態であったが、高熱のため入院した。入院時に患者に触れた看護師等の職員数名が数日後かゆみを伴う皮膚症状を訴えた。その後、患者が重度の角化型疥癬と診断されたため、院内感染対策委員会に対応策が検討された。

問232(実務)
角化型疥癬とその対応策に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 肌と肌の直接接触を介してのみ感染し、はがれた角質層の飛散や付着により感染が広まることはない。


2 患者のリネン等を洗濯する際、加熱処理や乾燥を行えば感染を防ぐことができる。


3 高齢者では一旦治癒と診断されても、数ヶ月後に再燃することがあるので注意を要する。


4 患者と接触がなく症状がない職員に対しても、予防の目的でイベルメクチンの内服投与を実施する。




問233(衛生)
院内感染を予防するために、陰圧個室に患者を収容するなど空気感染対策をとる必要がある感染症はどれか。2つ選べ。

1 水痘
2 結核
3 クロストリジウム・ディフィシル感染症
4 マイコプラズマ感染症

5 ノロウイルス感染症

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問 232    
問 233    

 e-REC解説

問232 解答 2、3

疥癬は、ヒゼンダニが皮膚の最外層である角質層に寄生し、人から人へ感染する疾患である。非常に多数(100万〜200万)のダニの寄生し、垢が増えたような角質増殖を起こす角化型疥癬と、少数(数十匹以上)の寄生であるが激しい痒みを伴う普通の疥癬とがある。
角化型疥癬は、宿主の免疫力が低下している場合に起こりやすい。また、感染力が極めて強く、集団感染の原因となりうるため、院内感染予防には厳重な隔離対策が必要である。

1 誤
角化型疥癬からの感染は、肌と肌の直接接触の他、はがれた角質層に存在する虫体及び虫卵の飛散や付着により生じる。

2 正
ヒゼンダニは、乾燥や熱に弱く、50℃、10分間の処理で死滅する。そのため、患者のリネン等を洗濯する際、加熱処理や乾燥を行えば感染を防ぐことができる。

3 正
疥癬の潜伏期間は約1〜2ヶ月であり、特に高齢者は免疫力が低下する傾向にあるため、角化型疥癬を発症しやすく、一旦治癒と診断されても、数ヶ月後に再燃することがあるので注意を要する。

4 誤
イベルメクチンの内服投与は、疥癬と確定診断された患者または疥癬患者と接触の機会があり、かつ疥癬の症状がある者に対して投与する。よって、患者と接触がなく症状がない者に対しては、用いない。


問233 解答 1、2

本問のうち、院内感染を予防するために、陰圧個室に患者を収容するなどの対策をとる必要がある感染症は、空気(飛沫核)感染を起こす水痘と結核である。院内感染を予防するために行う感染経路別予防策は、伝染性病原体の感染経路を知り、その経路を遮断することが重要である。感染経路別予防策は、伝染性病原体の感染経路により「空気感染予防策」、「飛沫感染予防策」、「接触感染予防策」に分類して対応する予防策である。なお、本問のうち、飛沫感染予防策をとる必要があるのはマイコプラズマ感染症であり、接触感染予防策をとる必要があるのはクロストリジウム・ディフィシル感染症とノロウイルス感染症である。

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