令和02年度 第105回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 238,239

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問 238  正答率 : 46.5%
問 239  正答率 : 77.8%

 国家試験問題

国家試験問題
62歳男性。進行性下行結腸がん手術後、テガフール・ウラシル配合剤を内服していた。その後、脾転移、腹膜播種が認められたため、FOLFIRI(ロイコボリン、5−FU、イリノテカン併用)+セツキシマブ療法を行うことになった。化学療法実施に先立ち、以下の検査を行った。

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その結果、KRASのエクソン2(コドン12、13)の変異のホモ接合型及びUGT1A128のホモ接合型であった。

問238(衛生)
この患者の遺伝子検査に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 RAS遺伝子はがん抑制遺伝子である。


2 RAS遺伝子に①の変異があると、細胞増殖シグナルの不活性化が抑制される。


3 RAS遺伝子産物はアポトーシスを誘導する。


4 UGT1A1遺伝子に②の変異があると、UGT1A1遺伝子産物の量が少なくなる。


5 UGT1A1遺伝子に②の変異があると、イリノテカンが加水分解されにくくなる。




問239(実務)
遺伝子検査を実施する理由について、患者から質問があり、薬剤師が回答することになった。この遺伝子検査に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 RAS遺伝子に①の変異があると、セツキシマブの有効性が低下する。


2 RAS遺伝子に①の変異があると、5−FUの有効性が向上する。


3 RAS遺伝子に①の変異があると、イリノテカンによる下痢が起こりやすくなる。


4 UGT1A1遺伝子に②の変異があると、5−FUによる骨髄抑制が起こりやすくなる。


5 UGT1A1遺伝子に②の変異があると、イリノテカンによる骨髄抑制が起こりやすくなる。

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問 238    
問 239    

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問238 解答 2、4

1 誤
RAS遺伝子はがん原遺伝子であり、変異によりがん遺伝子となる。がん遺伝子とは、正常な遺伝子(がん原遺伝子)が修飾(変異)を受けて、発現・構造・機能に異常をきたし、がん細胞を生じさせるものをいう。なお、がん抑制遺伝子とは、異常が生じた細胞にアポトーシスを誘導し、細胞増殖を抑制する遺伝子をいう。

2 正
RAS遺伝子には、KRAS遺伝子、NRAS遺伝子、HRAS遺伝子の3種類が知られており。その遺伝子産物に、KRASタンパク質、NRASタンパク質、HRASタンパク質がある。上皮成長因子受容体(EGFR)への刺激により細胞内のRASタンパクが活性化され、細胞増殖シグナルが伝達される。その後RASタンパクは自ら不活性型に戻り、シグナル伝達は抑制される。しかし、KRASのエクソン2(コドン12、13)の変異のホモ接合型の場合、RASタンパクは自ら不活性型に戻ることができず、恒常的に活性化した状態となる。

3 誤
解説1参照。RAS遺伝子は、がん抑制遺伝子ではない。

4 正
UGT1A1はUDP−グルクロン酸転移酵素の分子種の一つであり、UGT1A1遺伝子がUGT1A16、UGT1A128のいずれかをホモ接合体、またはヘテロ接合体としてもつ患者は、UGT1A1遺伝子転写が低下し、UDP−グルクロン酸転移酵素量が低下することが知られている。

5 誤
解説4参照。イリノテカンは肝臓のカルボキシエステラーゼにより加水分解され、活性代謝物であるSN−38になる。さらにSN−38はUGT1A1によりグルクロン酸抱合をうけて主に胆汁排泄される。UGT1A128のホモ接合型であると、グルクロン酸転移酵素の活性が低下するため、SN−38がグルクロン酸抱合を受けにくくなる。


問239 解答 1、5

1 正
問239解説2参照。セツキシマブは、上皮成長因子受容体(EGFR)に対するモノクローナル抗体製剤であり、上皮増殖因子(EGF)などの内因性リガンドがEGFRに結合するのを阻害する。その結果、細胞内でのRASタンパクの活性化が抑制され、細胞増殖シグナルの伝達が抑制される。しかし、KRASのエクソン2(コドン12、13)の変異のホモ接合型の場合、RASタンパクは恒常的に活性化した状態となるため、セツキシマブの有効性は低下する。

2 誤
KRASのエクソン2(コドン12、13)の変異のホモ接合型であると、5−FUの有効性が向上するといった報告はない。

3 誤
KRASのエクソン2(コドン12、13)の変異のホモ接合型であると、イリノテカンによる下痢が起こりやすくなるといった報告はない。

4 誤
UGT1A128のホモ接合型であると、5−FUによる骨髄抑制が起こりやすくなるといった報告はない。

5 正
問239解説5参照。UGT1A128のホモ接合型であると、グルクロン酸転移酵素の活性が低下するため、SN−38が排泄されにくくなり、副作用である骨髄抑制が起こりやすくなる。

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