令和04年度 第107回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 240,241

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問 240  正答率 : 82.1%
問 241  正答率 : 77.6%

 国家試験問題

国家試験問題
12月に行われた少年スポーツクラブの大会で、金属製のやかんを使って、粉末のスポーツドリンクを水道水で溶かし、そのスポーツドリンクを飲んだ子供たちが吐き気や嘔吐を発症した。8人の患者が近医を受診し、血液検査及び便検査を行った。血液検査の結果、血清中の亜鉛濃度90〜101 µg/dL(正常値;80〜130 µg/dL)、銅濃度278〜314 µg/dL(正常値;70〜132 µg/dL)、セレン濃度11.2〜13.2 µg/dL(正常値;10.6〜17.4 µg/dL)の範囲であり、他の重金属や中毒物質は検出されなかった。また、便検査の結果、食中毒の原因と考えられる細菌及びウイルスは検出されなかった。
一方、後日、やかんに残っていたスポーツドリンクを衛生研究所で分析したところ、以下のようなイオンが検出された。

ナトリウム520 mg/L、カリウム214 mg/L、カルシウム22 mg/L、
マグネシウム6 mg/L、銅200 mg/L

問240(実務)
これらの患者に対する治療薬として、適切なのはどれか。1つ選べ。

1 イダルシズマブ注射液


2 ナロキソン塩酸塩注射液


3 ペニシラミンカプセル


4 フルマゼニル注射液


5 プラリドキシムヨウ化物注射液




問241(衛生)
この中毒の原因となった物質の解毒にはたらく生体分子はどれか。1つ選べ。

1 カタラーゼ


2 グルタチオンペルオキシダーゼ


3 シトクロムP450


4 メタロチオネイン


5 ビリルビン

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問 240    
問 241    

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問240 解答 3

本患者の血液検査結果から銅濃度が正常値より高値であること、やかんに残っていたスポーツドリンクから銅イオンが検出されたこと、症状として吐き気、嘔吐を起こしたことから、本患者は銅中毒であることが考えられる。

1 誤
イダルシズマブ注射液は、ダビガトラン及びそのグルクロン酸抱合代謝物と高い親和性で特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体であり、ダビガトランの中和に用いられる。

2 誤
ナロキソン塩酸塩注射液は、オピオイドμ受容体においてモルヒネなどの麻薬性鎮痛薬と拮抗することで、麻薬性鎮痛薬の呼吸抑制の改善に用いられる。

3 正
ペニシラミンカプセルは、尿中重金属排泄量を増加させ、体外への重金属の除去を促進させるため、鉛、水銀、銅中毒に用いられる。

4 誤
フルマゼニル注射液は、ベンゾジアゼピン受容体において、ベンゾジアゼピン系薬物と拮抗することで、ベンゾジアゼピン系薬物による呼吸抑制の改善に用いられる。

5 誤
プラリドキシムヨウ化物注射液は、有機リン剤によりリン酸化されたコリンエステラーゼ(ChE)のリン酸エステルをChEより離脱させ、ChEの酵素活性を回復させるため、有機リン剤中毒に用いられる。


問241 解答 4

銅などの重金属の解毒にはたらく生体分子はメタロチオネインである。メタロチオネインは分子量6,000〜7,000のタンパク質であり、61個の構成アミノ酸のうちシステイン含量が約30%と高く、システインのSH残基が重金属と結合することで、重金属を無毒化する。

1 誤
カタラーゼは、過酸化水素を水と酸素に変換する酵素である。

2 誤
グルタチオンペルオキシダーゼは、過酸化水素を水に変換する酵素である。

3 誤
シトクロムP450は、異物の酸化反応や還元反応を触媒とする酵素である。

4 正
前記参照

5 誤
ビリルビンは、ヘムの分解代謝物である。

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