令和03年度 第106回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 244,245

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問 244  正答率 : 62.2%
問 245  正答率 : 68.9%

 国家試験問題

国家試験問題
問244〜245
小学校において、学校薬剤師が飲料水の水質検査を行った。この学校では、飲料水は水道水を水源として3階建物屋上の高置水槽に貯水し、あらためて塩素消毒装置を通したのち、校内の各階に設置した給水栓から給水している。

問244(衛生)
飲料水の水質検査に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。

1 塩化物イオンは、し尿等の混入があると値が増加する。


2 濁度は、無機又は有機性の浮遊物が多いと値が増加する。


3 有機物(全有機炭素(TOC)の量)の測定では、水中の有機物質を酸化して生成したCO2量から炭素量に換算している。


4 大腸菌は、特定酵素基質培地法を用いて、β−ガラクトシダーゼ活性の有無によって検出している。


5 pH値は、水質の変化によって変動するが、遊離残留塩素の消毒効果にも影響を与える。




問245(実務)
学校薬剤師が貯水する前の水道水及び高置水槽から最も遠い1階の給水栓における水の水質検査を実施したところ、表に示す結果となった。
スクリーンショット 2021-07-02 14.23.00.png

この飲料水の水質検査の実施状況及び結果から推測される内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 貯水する前の水道水が、水道水質基準を満たしていない。


2 給水栓における水の一般細菌が、学校環境衛生基準を超えて検出されている。


3 高置水槽内部が汚染されている可能性がある。


4 校内給水系統に、し尿浄化槽排水が混入している可能性がある。


5 塩素消毒が適切に行われていない可能性がある。

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問 244    
問 245    

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問244 解答 4

1 正しい
塩化物イオンは、し尿や下水、海水、工場排水の混入により増加する。よって塩化物イオンは、し尿汚染の推定項目とされ、200mg/Lを上回ると、し尿汚染が疑われる。

2 正しい
濁度は、水道法第4条に基づく水質基準の水道水が有すべき性状に関連する項目の1項目であり、水中に浮遊する無機性、又は有機性の微小粒子が増加すると濁度が増加する。

3 正しい
全有機炭素(TOC)は水中に存在する有機物の総量を、有機物中に含まれる炭素量で表したものである。測定方法として、試料水に含まれる有機物を酸化分解することで生成したCO2量を非分散型赤外線吸収装置で測定し、炭素量に換算する。

4 誤っている
水道水における大腸菌の存在は、特定酵素基質培地法により、大腸菌が有するβ−グルクロニダーゼ活性の有無により検出される。特定酵素基質培地法では、4−メチルウンベリフェニル−β−D−グルクロニド(MUG)を、大腸菌が有するβ−グルクロニダーゼで加水分解することで得られる青色蛍光物質(4−メチルウンベリフェロン)を測定することで大腸菌の存在を確認する。

5 正しい
遊離残留塩素は、HClO(次亜塩素酸)やClO(次亜塩素酸イオン)の状態で存在し、pHが7.5以下ではHClO(次亜塩素酸)の割合が、pHが7.5以上ではClO(次亜塩素酸イオン)の割合が多くなる。HClO(次亜塩素酸)とClO(次亜塩素酸イオン)では殺菌力が異なるため、pHは、消毒効果にも影響を与える。


問245 解答 3、5

水道法による水道水の水質基準は以下である。
スクリーンショット 2021-07-02 14.24.46.png


1 誤
前記参照。貯水する前の水道水は、水道水質基準を満たしている。

2 誤
前記参照。給水栓における水の一般細菌数は、基準値を下回っている。

3 正
貯水する前の水道水に比べて、給水栓における水では、一般細菌数、塩化物イオン、TOCの値も上昇しており、かつ、遊離残留塩素が基準値を下回っていることから、高置水槽内部が汚染されている可能性がある。

4 誤
し尿汚染の項目には推定項目と確定項目がある。
スクリーンショット 2021-07-02 14.26.45.png

硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素、TOC、塩素イオン、一般細菌数は、し尿汚染のおそれがある時に基準値を上回る可能性があるが、あくまで推定項目であるため、これらの項目ではし尿汚染があることを確定することはできない。し尿汚染があることを確定できるのは、確定項目である大腸菌が検出された場合である。
本問の水道水は、確定項目である大腸菌が未検出であるため、校内給水系統にし尿浄化槽排水が混入している可能性はない。

5 正
塩素消毒装置を通した後の給水栓における水の遊離残留塩素が基準値を下回っているため、塩素消毒が適切に行われていない可能性がある。

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