令和04年度 第107回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 258,259

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問 258  正答率 : 73.2%
問 259  正答率 : 80.6%

 国家試験問題

国家試験問題
33歳女性。最近体重が減少し、手指振戦、動悸、多汗があるため受診した。身体所見として眼球突出、びまん性甲状腺腫がありバセドウ病と診断され、薬局に以下の処方箋を持参した。なお、患者は動悸や振戦がひどくて辛いと話している。検査値等は以下のとおりである。

(検査値)
脈拍数115拍/分、遊離サイロキシン(FT4)4 ng/dL、遊離トリヨードサイロニン(FT3)10 pg/mL、甲状腺刺激ホルモン(TSH)0.05 µU/mL以下、TSH受容体抗体陽性

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問258(薬理)
処方1及び処方2のいずれかの薬物の作用に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 分解酵素活性化によるトリヨードサイロニンの分解促進


2 合成酵素阻害によるサイロキシンの合成阻害


3 TSH受容体遮断による振戦の改善


4 アドレナリンβ1受容体遮断による動悸の改善


5 アドレナリンβ2受容体遮断による甲状腺ホルモンの遊離抑制




問259(実務)
この患者への薬剤師の対応として、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 妊娠の有無を再確認する。


2 服用開始後2ヶ月間は原則として2週に1回、白血球や好中球の検査が必要と伝える。


3 手指振戦や動悸の軽減には通常数週間かかると伝える。


4 処方薬服用後に発熱しても、それはバセドウ病の症状であり、薬の副作用ではないと伝える。


5 手指振戦等の自覚症状がなくなったら、両処方の服用は終了すると伝える。

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問 258    
問 259    

 e-REC解説

問258 解答 2、4

処方1のチアマゾールは、甲状腺ホルモン合成酵素であるペルオキシダーゼを阻害することで、ヨウ素のサイログロブリンへの結合を阻害し、サイロキシン(T4)、トリヨードサイロニン(T3)の合成を阻害することにより、バセドウ病に用いられる。また、処方2のプロプラノロールは、非選択的アドレナリンβ受容体遮断薬であり、心臓のアドレナリンβ1受容体を遮断することで、バセドウ病における動悸を改善する。また、プロプラノロールは、振戦の改善作用も有する。


問259 解答 1、2

1 正
チアマゾールは、妊娠中の投与により胎児に甲状腺機能抑制が生じるおそれがある。また、プロプラノロールは、妊娠中の投与により新生児の発育遅延、血糖値低下、呼吸抑制が生じるおそれがあるため、投与前に妊娠の有無を再確認する。

2 正
チアマゾールの副作用として、重篤な無顆粒球症が投与開始後2ヶ月以内に発現しやすいため、服用開始後2ヶ月間は原則として2週に1回、白血球や好中球の検査が必要と伝える。

3 誤
手指振戦や動悸の軽減は、プロプラノロールのアドレナリンβ受容体遮断作用によるものであるが、プロプラノロールの作用は投与後数時間で発現する。

4 誤
チアマゾールの副作用として、無顆粒球症が生じるおそれがあるので、無顆粒球症の初期症状である発熱、咽頭痛が現れた際には速やかに主治医に連絡するように伝える。

5 誤
プロプラノロールはT4、T3値が正常化し手指振戦等の自覚症状が消失したら服用中止を検討するが、チアマゾールは自覚症状が消失しても漸減して服用を続ける必要がある。チアマゾールの内服治療は1、2年継続することも多く、最小量の服用で半年以上甲状腺機能が正常に保たれていれば、服用中止を検討する。

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