令和03年度 第106回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 264,265

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問 264  正答率 : 80.7%
問 265  正答率 : 78.5%

 国家試験問題

国家試験問題
63歳男性。体重64 kg。左腎にがんを指摘され部分摘出術を受けた。その後、再発と骨転移、膵転移を認め、分子標的薬の投与が行われたものの再再発との評価を受け、先月よりニボルマブの単剤療法が開始された。

問264(実務)
ニボルマブの投与3回を経過した時点で1日6回以上の下痢、強い腹痛、発熱37.5℃以上、鮮血便を認めたため大腸内視鏡検査を実施したところ、消化管潰瘍の所見を認め潰瘍性大腸炎と診断された。初期治療に用いる薬剤として最も適切なのはどれか。1つ選べ。

1 ペムブロリズマブ点滴静注


2 アダリムマブ皮下注


3 イピリムマブ点滴静注


4 ロペラミド塩酸塩錠


5 メチルプレドニゾロン錠




問265(薬理)
前問で選択した薬物の作用機序に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。

1 ヘルパーT細胞内のカルシニューリンを阻害することで、インターロイキン−2の産生を低下させる。


2 アウエルバッハ神経叢のオピオイドμ受容体を刺激することで、アセチルコリンの遊離を抑制し、蠕動運動を抑制する。


3 T細胞の細胞傷害性Tリンパ球抗原−4(CTLA−4)に結合することで、T細胞の活性を維持する。


4 可溶性腫瘍壊死因子α(TNF−α)と結合することで、抗炎症作用を発揮する。


5 受容体との複合体が核内に移行し、糖質コルチコイド応答配列に結合することでタンパク質の生成を調節する。

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問 264    
問 265    

 e-REC解説

問264 解答 5

ニボルマブは、ヒトPD−1モノクローナル抗体であり、T細胞表面に発現するPD−1に結合することで、がん細胞によるPD−1を介したT細胞抑制作用の低下を介して免疫賦活作用を示し、抗腫瘍効果を発揮する。
このような薬理作用を示すことから、ニボルマブのT細胞活性化作用により、過度の免疫反応に起因すると考えられる様々な免疫関連副作用(irAE:immune−related Adverse Event)が見られることがあり、潰瘍性大腸炎もその一つである。irAEが発現した場合の初期治療としては、メチルプレドニゾロン錠などの副腎皮質ステロイド性薬の投与等を検討する。なお、アダリムマブ皮下注は潰瘍性大腸炎に適応があるが、既存治療で効果不十分な場合に限るとされ、初期治療には用いられない。その他の選択肢の薬物は、潰瘍性大腸炎には用いられない。


問265 解答 5

1 誤
設問の記述は、シクロスポリンやタクロリムスの作用機序である。

2 誤
設問の記述は、ロペラミドの作用機序である。

3 誤
設問の記述は、イピリムマブの作用機序である。

4 誤
設問の記述は、アダリムマブの作用機序である。

5 正
メチルプレドニゾロンの作用機序である。副腎皮質ステロイド性薬であるメチルプレドニゾロンは、細胞内受容体に結合後、受容体との複合体が核内に移行し、糖質コルチコイド応答配列に結合することでタンパク質の生成を調節し、抗炎症作用や免疫抑制作用などを示す。

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