平成25年度 第98回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 268,269

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問 268  正答率 : 47.1%
問 269  正答率 : 67.9%

 国家試験問題

国家試験問題
問268〜269
80歳女性。体重65 kg。うっ血性心不全、高血圧症、慢性腎不全と診断され、以下の薬剤を服用していた。アレルギー歴、肝機能障害、副作用歴なし。
昨日、食欲不振と不整脈等の体調変化が認められ、救急救命センターに運ばれた。

ジゴキシン錠0.25 mg
フロセミド錠40 mg
スピロノラクトン錠25 mg
デノパミン錠5 mg
バルサルタン錠40 mg

問268(実務)
診察した医師はジギタリス中毒を疑い、薬剤師に情報提供を求めた。ジギタリス中毒に関する内容として、誤っているのはどれか。1つ選べ。

1 消化器症状として食欲不振、悪心がある。


2 視覚異常として黄視・複視がある。


3 血漿中ジゴキシン濃度(トラフ値)が2 ng/mLを超えると、中毒症状の発現頻度が高くなる。


4 肝機能障害のある患者では中毒症状を起こしやすい。


5 一般に、ジゴキシン除去を目的とした血液透析は無効である。




問269(薬剤)
この患者で推定される薬物の体内分布に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 高齢であるため体脂肪率が増加しており、脂溶性の高い薬物の脂肪組織への蓄積が生じやすい。


2 高齢であるため血清中のα1−酸性糖タンパク質濃度が低下しており、塩基性薬物の非結合型分率が上昇している。


3 心不全により血流が増大しており、薬物の分布容積の増大が起こりやすい。


4 慢性腎不全により血漿中のアルブミン濃度が低下しており、酸性薬物の非結合形分率が上昇している。

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問 268    
問 269    

 e-REC解説

問268 解答 4

1 正しい
ジギタリス中毒の初期症状として、消化器症状(食欲不振、悪心など)、視覚異常(黄視、複視など)、精神神経系症状などが現れる。また、それらの症状に先行して不整脈が出現することもある。

2 正しい
解説1参照

3 正しい
血漿中ジゴキシンの有効血中濃度は0.5〜2 ng/mLであるため、ジゴキシンのトラフ値が2 ng/mLを超えると中毒症状の発現頻度が高くなる。

4 誤っている
ジゴキシンは腎消失型薬物であるため、腎機能障害のある患者では中毒症状をおこしやすい。

5 正しい
ジゴキシンは組織移行性が高いため、全身の組織に移行したジゴキシンを血液透析で除去することはできない。


問269 解答 1、4

1 正
高齢者では、体脂肪率が増加するため、脂溶性の高い薬物の組織への移行性が高くなり、水溶性の高い薬物の組織への移行性は小さくなる。

2 誤
高齢者では、一般的に血清中のα1-酸性糖タンパク質濃度が増加するため、α1-酸性糖タンパク質と結合する塩基性薬物の非結合型分率が減少している。

3 誤
心不全の患者では、各組織における血流量が減少することにより、薬物が組織に分布しにくくなる。そのため、心不全患者では薬物の分布容積が減少することがある。

4 正
慢性腎不全患者では、糸球体ろ過により血漿中のアルブミンが尿中に排泄される。そのため、慢性腎不全患者では、血漿中のアルブミン濃度が低下しており、アルブミンと結合しやすい酸性薬物の非結合形分率が上昇する。

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