平成28年度 第101回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 284,285

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問 284  正答率 : 91.3%
問 285  正答率 : 96.5%

 国家試験問題

国家試験問題
65歳男性。在宅で高カロリー輸液療法を実施することとなった。かかりつけ薬局の薬剤師が、高カロリー輸液の調製と安全使用に関する実地研修を受けるため、病院の薬剤部を訪れた。

問284(実務)
高カロリー輸液を安全に調製、使用するために、病院薬剤師がかかりつけ薬局の薬剤師に行う指導として、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 混合調製には、無菌室あるいはクリーンベンチを使用するのが望ましい。


2 コアリング防止のため、注射針はゴム栓の指定位置に斜めに刺す。


3 重篤なアシドーシスの発現を防止するため、ビタミンCを添加する。


4 高カロリー輸液用総合ビタミン剤は投与間際に混合し、輸液バッグ全体を遮光する。




問285(薬剤)
糖・電解質水溶液からなる室とアミノ酸水溶液からなる室が、隔壁によって、2室に分けられた構造の高カロリー輸液剤(ダブルバッグ製剤)に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 通例、保存剤が添加されている。
2 バッグを両手で強く押すことにより、隔壁部を開通させる。
3 2室に分かれているため、混合するまでメイラード反応を回避できる。
4 脂肪乳剤を同時に投与する場合は、糖・電解質水溶液からなる室に混合する。

5 混合した製剤は、2時間以内に全量を投与する。

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問 284    
問 285    

 e-REC解説

問284 解答 1、4

1 正
高カロリー輸液は、長時間かけて投与することや、微生物の栄養源となる成分を含んでいることから、無菌的に調製することが求められる製剤である。そのため、高カロリー輸液混合調製には無菌室やクリーンベンチを使用することが望ましいとされている。

2 誤
コアリング防止のため、注射針はゴム栓の指定位置に垂直にゆっくりと刺す必要がある。
※コアリングとは、注射針をバイアルのゴム栓に穿刺するとき、注射針によりゴムが削り取られることである。高カロリー輸液のゴム栓に注射針を刺す際は、削り取られたゴム片が、容器内に混入するおそれがあるため、コアリングの発生を防ぐ必要がある。

3 誤
高カロリー輸液療法を実施する際、重篤な乳酸アシドーシスの発現を防止するため、ビタミンB1を添加する必要がある。高カロリー輸液には患者の栄養不足を補うため、大量のブドウ糖が含まれており、ブドウ糖を好気的に代謝する際にビタミンB1が必要となる。高カロリー輸液中にビタミンB1が不足すると嫌気的代謝が行われ、乳酸が生成され、それにより代謝性アシドーシスを発現するおそれがあるため、ビタミンB1を添加する。

4 正
高カロリー輸液用総合ビタミン剤は、高カロリー輸液に酸化防止剤として含まれている亜硫酸水素ナトリウムにより分解される。そのため、高カロリー輸液用総合ビタミン剤は、投与間際に高カロリー輸液に混合することが望ましい。また、高カロリー輸液用総合ビタミン剤に含まれるビタミンは、光により分解するものがあるので、輸液バッグ全体を遮光する必要がある。


問285 解答 2、3

1 誤
保存剤は、微生物の増殖を抑制するために加える添加剤であるが、人体にも有害であるため、輸液剤のような大量投与する注射剤には添加しない。

2 正
隔壁によって、2室に分けられた構造の輸液剤をダブルバッグ製剤という。ダブルバッグ製剤を使用する際はバッグの上室あるいは下室を強く押すことで隔壁部を開通させ、薬剤を混合する必要がある。

3 正
メイラード反応は、ブドウ糖のカルボニル基とアミノ酸のアミノ基がシッフ塩基を形成し、さらにジカルボニル化合物の重合を経て、褐色物質であるメラノイジンを生成する反応である。ダブルバッグ製剤は糖・電解質水溶液からなる室とアミノ酸水溶液からなる室が、隔壁によって、2室に分けられた構造をしていることで、混合を開始するまで、メイラード反応を回避することができる。

4 誤
脂肪乳剤を糖・電解質からなる室に混合すると、脂肪乳剤の粒子の粗大化が起こり、乳剤の分散性の低下につながるおそれがある。そのため、脂肪乳剤を同時に投与する場合は、糖・電解質水溶液からなる室に混合するのではなく、単独で末梢静脈から投与する必要がある。

5 誤
高カロリー輸液は、通常、成人には全量を24時間かけて中心静脈内に持続点滴注入する製剤である。2時間以内に全量投与する製剤ではない。

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