令和04年度 第107回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 290,291

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問 290  正答率 : 59.3%
問 291  正答率 : 52.2%

 国家試験問題

国家試験問題
58歳男性。身長162 cm、体重88 kg。10年前から健康診断で、高血圧及び高血糖を指摘されていたが放置していた。喫煙歴30年(1日10本程度)、20歳ごろよりビール大びん2本と日本酒1合程度をほぼ毎日飲酒していた。数ヶ月前より、全身倦怠感が次第に強くなってきているのを自覚していたが、本日、外出中に駅の階段で動けなくなり、救急搬送された。

(来院時の所見及び検査値)
意識は清明であり、四肢に運動・感覚障害は認めない。
血圧190/110 mmHg、心拍数72拍/分、AST 210 IU/L、ALT 150 IU/L、
γ−GTP 175 IU/L、血清クレアチニン値0.71 mg/dL、
血清浸透圧300 mOsm/L、血糖値310 mg/dL、HbA1c 10.5%(NGSP値)、
尿糖(3+)、尿中アルブミン正常、尿蛋白(-)、尿中ケトン体(3+)、浮腫(-)

問290(病態・薬物治療)
この患者に起きている状況として、考えられるのはどれか。2つ選べ。

1 高血圧緊急症


2 くも膜下出血


3 糖尿病性腎症


4 高浸透圧高血糖症候群


5 糖尿病性ケトアシドーシス




問291(実務)
上記患者は、1ヶ月の入院加療後退院し、以下の処方で通院治療を続け、3年が経過した。

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運動療法及び食事療法も指導されたとおり実践しており、処方された薬剤は指示どおり服薬していたが、飲酒はやめられないと話している。今回の検査で以下の結果となり、再教育のため入院となった。

(所見及び検査値)
入院時体重68 kg、血圧140/85 mmHg、心拍数70拍/分、AST 35 IU/ L、
ALT 42 IU/L、γ−GTP 162 IU/L、血清クレアチニン値2.6 mg/dL、
空腹時血糖値180 mg/dL、HbA1c 8.2%(NGSP値)、尿糖(+)、
尿蛋白(2+)、尿中ケトン体(-)、下肢浮腫(-)

この患者に対する処方提案のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 メトホルミンの増量


2 シタグリプチンをリナグリプチンに変更


3 フロセミドの追加


4 テルミサルタンの追加


5 アムロジピンの増量

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問290 解答 1、5

1 正
高血圧緊急症は、血圧の高度の上昇(多くは180/120 mmHg以上)によって、脳、心臓、腎臓、大血管などの標的臓器に急性の障害が生じ、進行している状態と定義される。本患者の来院時の検査所見として血圧は血圧190/110 mmHgであり、高血圧緊急症を引き起こしている可能性が高い。

2 誤
くも膜下出血では、突発的な頭痛、悪心・嘔吐、意識障害などを認めることが多い。本患者ではそのような所見は認められないため、くも膜下出血を引き起こしているとは考えにくい。

3 誤
糖尿病性腎症は、初期に微量アルブミン尿を認めることが多く、その後血清クレアチニンが上昇する。本患者は来院時の検査所見において、血清クレアチニン値0.71 mg/dL、尿中アルブミン正常、尿蛋白(-)であることから、糖尿病性腎症を引き起こしているとは考えにくい。

4 誤
高浸透圧高血糖症候群は、著しい高血糖(600 mg/dL以上)と高度の脱水に基づく高浸透圧血症(320 mOsm/L以上)により循環不全をきたした状態であり、著しいアシドーシスを認めないことが特徴である。本患者の来院時の検査所見として、血糖値310 mg/dL、血清浸透圧300 mOsm/Lであることから、高浸透圧高血糖症候群を引き起こしていると考えにくい。

5 正
糖尿病性ケトアシドーシスでは、極度のインスリン作用低下に伴い、高血糖が生じる。また、代償的に脂肪分解が亢進し、肝臓でのケトン体(アセトン、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸)の生成が促進し、著しいケトン体の上昇も生じる。本患者は来院時の検査所見において、血糖値310 mg/dL、尿中ケトン体(3+)であることから、糖尿病性ケトアシドーシスを引き起こしている可能性が高い。


問291 解答 2、4

本患者は検査所見において、血清クレアチニン値2.6 mg/dL、空腹時血糖値180 mg/dL、HbA1c 8.2%(NGSP値)、尿糖(+)、尿蛋白(2+)であることから、糖尿病性腎症を合併したと考えられる。そのため、腎機能に応じた処方提案が必要である。

1 不適切
メトホルミンは、腎機能障害の患者に投与すると、排泄が遅延し、乳酸アシドーシスを起こすおそれがある。そのため、本患者に対するメトホルミンの増量の処方提案は不適切である。

2 適切
シタグリプチンは、腎排泄型DPP−4阻害薬であるため、腎障害のある本患者では排泄が遅延し、低血糖を生じる危険性がある。そのため、胆汁排泄型DPP−4阻害薬のリナグリプチンに変更する処方提案は適切である。

3 不適切
フロセミドなどの利尿薬は、浮腫が著明な場合に用いられる。本患者は検査所見において、浮腫は認められないため、フロセミドの追加の処方提案は不適切である。

4 適切
本患者の降圧療法としてアムロジピンが用いられているが、現状は血圧140/85 mmHgと降圧不十分である。そのため、胆汁排泄型ARBのテルミサルタンの追加の処方提案は適切である。

5 不適切
アムロジピンの最大投与量は1日10 mgであるため、本患者にアムロジピンの増量の処方提案は不適切である。

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