令和05年度 第108回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 292,293

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問 292  正答率 : 66.2%
問 293  正答率 : 44.7%

 国家試験問題

国家試験問題
49歳男性。身長162 cm、体重50 kg。高血圧症治療のため、かかりつけ内科受診中。降圧効果が思わしくないため、大学病院を紹介受診し、精査のため入院となった。精査の結果、両側副腎の腫大が認められたが手術適応はなかった。血液検査の結果から、ARR（注）を求めたところ、298であった。

（身体所見及び検査値）
血圧158/94 mmHg、TG（トリグリセリド）147 mg/dL、総コレステロール180 mg/dL、
PRA（血漿レニン活性）0.43 ng/mL/hr（仰臥位安静、基準値：0.2〜2.7 ng/mL/hr）、
PAC（血漿アルドステロン濃度）128 pg/mL（仰臥位安静、基準値：29.9〜159 pg/mL）、
空腹時血糖118 mg/dL、尿酸6.8 mg/dL、K 3.5 mEq/L、HbA1c 6.5%、
血清クレアチニン1.5mg/dL
尿糖（－）、尿蛋白（＋）、eGFR 40.7 mL/min/1.73 m2、
（注）ARR：アルドステロン濃度／レニン活性比（基準値：200 以下）

（紹介状を記載した医師からのコメント抜粋）
服用薬　アムロジピン錠5 mg　1回1錠　朝食後。当院以外受診なし。
以前、にきび治療のための抗アンドロゲン薬で女性化乳房を認めた。
味の濃い味噌汁などを好み、塩分摂取量が多い。

問292（病態・薬物治療）
本症例で、高血圧が持続した場合、合併しやすい病態はどれか。２つ選べ。

１　下垂体腫瘍


２　大動脈解離


３　脳梗塞


４　前立腺がん


５　褐色細胞腫




問293（実務）
血圧コントロールのために追加する薬物として、最も適切なのはどれか。１つ選べ。

１　スピロノラクトン


２　ヒドロクロロチアジド


３　エプレレノン


４　エサキセレノン


５　ビソプロロールフマル酸塩

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問292　解答　２、３

本患者は、高血圧症だがアムロジピン錠による降圧効果が思わしくないこと、両側副腎の腫大が認められていること、ARR（アルドステロン濃度／レニン活性比）が298（基準値：200 以下）と高値を示していることなどから、原発性アルドステロン症に罹患していると推測される。
本症例のような高血圧状態が持続した場合、血管壁に対して慢性的に圧がかかることで血管障害が生じ、大血管脆弱化による大動脈解離や大動脈瘤、アテローム性動脈硬化による脳梗塞や虚血性心疾患（狭心症、心筋梗塞）、細動脈硬化による脳内出血や慢性腎臓病（CKD）などの様々な臓器障害を合併するおそれがある。


問293　解答　４


原発性アルドステロン症の血圧コントロールの第一選択としては抗アルドステロン薬が用いられ、本選択肢ではスピロノラクトン、エプレレノン、エサキセレノンが該当する。
このうち、スピロノラクトンとエプレレノンは、ステロイド骨格を有する抗アルドステロン薬であり、アンドロゲン受容体にも遮断作用を示すため、副作用として女性化乳房を起こすことがある。
一方、エサキセレノンは、ステロイド骨格を持たない抗アルドステロン薬であり、選択的にアルドステロン受容体を遮断するため、女性化乳房を起こす可能性は極めて低い。
本患者は以前、抗アンドロゲン薬で女性化乳房を認めたことがあることがあるため、追加する薬物としては、女性化乳房のリスクが低いエサキセレノンが最も適切である。

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