令和03年度 第106回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 300,301

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問 300  正答率 : 65.5%
問 301  正答率 : 86.9%

 国家試験問題

国家試験問題
51歳男性。2年前にStageⅣの直腸がんと診断され、抗がん剤による治療が開始された。現在、四次治療中で、医師からがん遺伝子パネル検査を提案された。「がんの多い家系であり、がんが遺伝であることがはっきりするのは不安で、がん遺伝子パネル検査を受けることについて悩んでいる。」と担当薬剤師に相談があった。そこで、薬剤師は、認定遺伝カウンセラーに相談することを勧めた。

※ヒトの遺伝子のうち、がんの発生に関わる遺伝子セット(パネル)を一度に解析する検査。同定された遺伝子変異に効果のある抗がん剤が存在すれば、治療に用いることができる。

問300(病態・薬物治療)
この患者のがんが遺伝性である場合、原因となり得る遺伝子として最も適切なのはどれか。1つ選べ。

1 APC


2 BCR−ABL


3 BRCA1


4 EGFR


5 PTEN




問301(実務)
認定遺伝カウンセラーが作成した以下の家系図から考えられることとして、正しいのはどれか。2つ選べ。なお四角は男性、丸は女性を示す。

スクリーンショット 2021-07-04 19.18.22.png

1 患者の母方の家系にがん患者が多い。


2 アの重複がんは、遺伝性のがんを疑う根拠とならない。


3 イは交通事故で死亡していなければ、がんに羅患していた可能性が高い。


4 ウは今後がんを発症する可能性が高いので、がん検診を推奨する。


5 エは未成年なので、カウンセリングの内容を伝えてはいけない。

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問 300    
問 301    

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問300 解答 1

本患者は、2年前に直腸がんと診断されている。遺伝性大腸がんの原因となり得る遺伝子変異としては、家族性大腸腺腫症(FAP:Familial adenomatous polyposis)を引き起こすAPC遺伝子変異や、リンチ症候群(HNPCC:herediatary non- polyposis colorectal cancer)を引き起こすMLH1MLH2MLH6変異などがあげられる。
※リンチ症候群:大腸がんや卵巣がんなどの易罹患性症候群

1 正
前記参照。

2 誤
BCR−ABLは、慢性骨髄性白血病などの原因となる遺伝子である。

3 誤
BRCA1は、変異によって乳がんなどの原因となる遺伝子である。

4 誤
EGFRは、変異によって肺がんなどの原因となる遺伝子である。

5 誤
PTENは、変異によってカウデン症候群の原因となる遺伝子である。
※カウデン症候群:皮膚病変と過誤腫性ポリポーシスを認める疾患で、乳がんや子宮がん、甲状腺がんなど多臓器がんの原因となる。


問301 解答 3、4

1 誤
家系図から、患者の父方の家系にがん患者が多くみられる。

2 誤
アの母が卵巣がんに羅患しており、兄も胃がんに羅患していることから、アの重複がんは、遺伝性のがんの可能性が疑われる。

3 正
イの母親や兄姉2人ともがんに羅患していることから、イは交通事故で死亡していなければ、遺伝によりがんに羅患していた可能性が高い。

4 正
ウは本患者同様、父方の家系のがんの遺伝を引き継いでいる可能性が高いため、がん検診を推奨する必要がある。

5 誤
未成年であっても、自身の状況を把握し、本人が検査を受ける意思決定を行うことが重要である。そのため、未成年にカウンセリングの内容を伝えることは禁止されていない。

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