令和06年度 第109回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 314,315

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問 314  正答率 : 71.5%
問 315  正答率 : 72.2%

 国家試験問題

国家試験問題
大学病院で循環器内科を担当している薬剤師が、循環器内科病棟の医師から「糖尿病の治療薬である医薬品A(カプセル剤)が心不全にも効果があるという報告を聞いたので、当院でも効果を検証することを目的として、無作為化二重盲検比較試験を実施したいと考えている。認定臨床研究審査委員会に申請したいので、研究計画書について薬剤師の立場から追加や修正した方が良いところがあるかチェックしてほしい。」と依頼された。研究の概要は以下のとおりである。なお、医薬品Aは日本では心不全の適応はない。

<比較試験の計画(一部抜粋)>
対象患者:成人の心不全患者(心機能はNYHA(注1)分類Ⅱ度かつ左室駆出率が低下(40%未満)した心不全(HFrEF(注2)))
除外基準:重症の糖尿病患者又は重症の腎機能障害患者
評価項目:心不全で入院するまでの期間
方  法:心不全の標準治療に医薬品Aを追加服用する群(介入群)と心不全の標準治療のみを行う群(非介入群)に1:1の比で無作為に分け、36ヶ月それぞれの治療を実施する。
両群とも被験薬は病院内で調剤する。介入群には医薬品Aを、非介入群にはプラセボ薬を投与する。

(注1)NYHA:New York Heart Association(ニューヨーク心臓協会)
(注2)HFrEF:heart failure with reduced ejection fraction

問314(実務)
薬剤師がこの計画を確認し、以下の追加内容を検討した。計画書に追加記載するのに適切なのはどれか。2つ選べ。

1 服薬遵守率が設定した値より低い場合は、解析から除外すること。


2 副作用が発現した場合は、必ず試験を中止すること。


3 非介入群の患者には、医薬品Aと併用禁忌の薬剤は使用してもよいこと。


4 介入群の患者には、投与するのは医薬品Aであることを説明し、正しく服用させること。


5 医薬品Aとプラセボ薬は、外観に差がないカプセルに充てんしたものを使用すること。




問315(法規・制度・倫理)
この研究は、臨床研究法の臨床研究のうち特定臨床研究に該当する。該当する理由として正しいのはどれか。1つ選べ。

1 大学病院で行う研究であるため。


2 無作為化二重盲検比較試験であるため。


3 医薬品の適応外使用の有効性を検証する研究であるため。


4 医師主導で行う研究であるため。


5 侵襲を含む研究であるため。

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問 314    
問 315    

 e-REC解説

問314 解答 1、5

無作為化二重盲検比較試験とは、介入群と非介入群が無作為に選択され、被験者がどちらの群に割りつけられたかを被験者も医師等の医薬関係者も知らない状態で投与される比較試験であり、被験者及び医師の心理的影響を排除することや薬の外観等で被験者の群が判明してしまう恐れを排除することができる。

1 正
服薬遵守率が設定した値より低い場合が解析に含まれていると、解析結果が正確に評価できなくなる可能性がある。したがって、「服薬遵守率が設定した値より低い場合は、解析から除外すること。」は、計画書に追加記載する内容として適切である。

2 誤
副作用が生じた場合、定められた期間内に、その旨を実施医療機関の管理者に報告した上で、当該実施計画に記載された認定臨床研究審査委員会に報告することが義務付けられているが、副作用が発生した場合に、必ずしも試験を中止する必要はない。したがって、「副作用が発現した場合は、必ず試験を中止すること。」は、計画書に追加記載する内容として不適切である。

3 誤
無作為化二重盲検比較試験では、介入群と非介入群が無作為に選択され比較されるが、介入群で使用できない薬剤(医薬品Aと併用禁忌の薬剤など)を非介入群の患者に使用すると、解析結果が正確に評価できなくなる可能性がある。したがって、「非介入群の患者には、医薬品Aと併用禁忌の薬剤は使用してもよいこと。」は、計画書に追加記載する内容として不適切である。

4 誤
被験者に投与するのは医薬品Aであることを説明すると、患者が介入群又は非介入群のどちらに割りつけられたのかを知り得る情報となる。したがって、「介入群の患者には、投与するのは医薬品Aであることを説明し、正しく服用させること。」は、計画書に追加記載する内容として不適切である。

5 正
医薬品Aとプラセボ薬の外観に差があると投与された薬剤が医薬品Aとプラセボ薬のどちらであるかが被験者に知られてしまい、それによる心理的影響(プラセボ効果)により解析結果が正確に評価できなくなる可能性がある。したがって、「医薬品Aとプラセボ薬は、外観に差がないカプセルに充てんしたものを使用すること。」は、計画書に追加記載する内容として適切である。


問315 解答 3

臨床研究法における臨床研究とは、医薬品等を人に対して用いることにより、当該医薬品等の有効性又は安全性を明らかにする研究と定義されている。臨床研究のうち、「未承認・適応外の医薬品等の臨床研究」又は「製薬企業等からの資金提供を受けた医薬品等の臨床研究」に該当する介入研究を特定臨床研究という。
本問の臨床研究は、「日本では心不全の適応がない医薬品A(糖尿病治療薬)について、心不全にも効果があるかを検証することを目的とした臨床研究」であり、医薬品の適応外使用の有効性を検証する研究であるため、臨床研究法の臨床研究のうち特定臨床研究に該当する。

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