平成30年度 第103回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 95

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問 95  正答率 : 48.5%

 国家試験問題

国家試験問題
分子の振動、回転、電子遷移に伴う、分子のエネルギー準位間の遷移と電磁波の吸収及び散乱に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 分子の振動、回転、電子遷移のうち、回転に伴って吸収される電磁波の波長が最も長い。


2 吸収される電磁波の波長と、遷移するエネルギー準位間のエネルギー差には、正の比例関係がある。


3 ラマン散乱が観測されるためには、分子の振動によって双極子モーメントが変化する必要がある。


4 分子の振動、回転、電子遷移に伴う吸収のうち、吸光度が濃度に比例するのは電子遷移の場合だけである。


5 電子遷移に伴う吸収のスペクトルが幅広い吸収帯となるのは、分子の振動や回転によるエネルギー変化も反映されるからである。

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問 95    

 e-REC解説

解答 1、5

1 正
分子の持つエネルギー準位は、電子遷移、振動遷移および回転遷移の3種に大別されている。いずれのエネルギー準位についてもエネルギーの低い基底状態とエネルギーの高い励起状態が存在しており、両状態間のエネルギー幅と対応する電磁波は以下のとおりである。
スクリーンショット 2018-08-15 11.50.35.png
よって、分子の振動、回転、電子遷移のうち、回転に伴って吸収される電磁波の波長が最も長い。

2 誤
電磁波の波長とエネルギーは以下の関係式(①〜③)が成り立つ。
電磁波のエネルギーEは以下の①式で表される。
Ehv ……①   h:プランク定数、v:振動数
また、光速度Cは以下の②式で表される。
C=λv……②   λ:波長
①式と②式を変形することにより、エネルギーEは以下の③式で表される。
スクリーンショット 2018-08-15 11.53.54.png
よって、吸収される電磁波の波長と、遷移するエネルギー準位間のエネルギー差には、反比例の関係がある。

3 誤
ラマン散乱が観測されるためには、分子の振動によって電子分布の偏り(分極率)が変化する必要がある。なお、分子の振動によって双極子モーメントが変化する必要があるのは、赤外線の吸収を観測する場合である。

4 誤
吸光度は、電子遷移の場合だけでなく、振動や回転の場合も濃度に比例する。

5 正
電子遷移を起こすエネルギー変化は、回転エネルギーや振動エネルギーの遷移も伴うため、吸収スペクトルは幅広い連続スペクトルとして観測される。

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