令和03年度 第106回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 292,293

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問 292  正答率 : 81.7%
問 293  正答率 : 82.4%

 国家試験問題

国家試験問題
13歳女児。身長127 cm、体重23 kg。多飲、多尿、口喝と1ヶ月に3 kgの体重減少があった。ある朝、全身倦怠感、下痢、嘔吐があり、意識障害となったため母親が救急車を要請し、病院に搬送された。1型糖尿病と診断され入院となった。搬送時の検査データを下に示す。

(検査値)
血糖値770 mg/dL、尿糖(4+)、尿蛋白(-)、尿中ケトン体(4+)、Na 132.0 mEq/L、K 4.2 mEq/L、動脈血液ガスpH 7.1、HCO3 9.0mEq/L

問292(病態・薬物治療)
この患児の病態及び検査に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 インスリン過剰状態にある。
2 アルカローシスによって、血中重炭酸イオンの減少がみられる。
3 高血糖により脂肪分解が抑制されている。
4 呼気中にアセトン臭が認められる。
5 Glutamic acid decarboxylase(GAD)抗体が陽性である可能性が高い。


問293(実務)
この患児への初期対応として適切なのはどれか。2つ選べ。

1 ジペプチジルペプチダーゼ−4(DPP−4)阻害薬の経口投与
2 インスリンの点滴静注
3 グルコン酸カルシウムの点滴静注
4 生理食塩液の点滴静注
5 5%ブドウ糖注射液の点滴静注

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問 292    
問 293    

 e-REC解説

問292 解答 4、5

1 誤
1型糖尿病は、自己免疫性に膵β細胞が破壊されることでインスリンの絶対的欠乏を来たし、慢性の高血糖状態を生じる代謝症候群である。

2 誤
動脈血液ガスpH 7.1、尿中ケトン体(4+)であることより、本患者は糖尿病ケトアシドーシスを生じていると推測される。糖尿病ケトアシドーシスでは、酸性物質であるケトン体を中和するためHCO3-が消費され、血中HCO3が減少する。

3 誤
糖尿病では、インスリン作用不足により筋組織などに糖が取り込めず、糖利用が行えないため、代償的に脂肪分解を亢進させてエネルギーを産生しようとする。その際にケトン体(アセトン、アセト酢酸、3(β)−ヒドロキシ酪酸)が産生されアシドーシスを引き起こすことがあり、これを糖尿病ケトアシドーシスという。

4 正
解説4参照。糖尿病ケトアシドーシス時には、呼気中にアセトン臭が認められる。

5 正
1型糖尿病では、自己抗体が検出されることが多く、代表的な臨床マーカーとしてGlutamic acid decarboxylase(GAD)抗体がある。


問293 解答 2、4

糖尿病ケトアシドーシスの初期治療は、インスリンの点滴静注を基本とし、脱水の程度により生理食塩液の点滴静注などの輸液の投与を行う。

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