令和04年度 第107回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 200,201

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問 200  正答率 : 63.7%
問 201  正答率 : 65.7%

 国家試験問題

国家試験問題
68歳女性。痰を伴う咳、発熱、悪寒、息苦しさ、倦怠感を訴え、かかりつけ医を受診した。

(身体所見)
体温38.5℃、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)94%、心音 異常なし、
呼吸音 左肺前胸部に水泡音、胸部X線 肺浸潤影あり

(検査所見)
白血球数 16,000 /µL、CRP 4.8 mg/dL

副作用歴 ペニシリン系抗生物質により発疹

以上の情報から、市中肺炎と診断された。

問200(実務)
この患者に推奨される抗菌剤はどれか。2つ選べ。

1 クラブラン酸カリウム・アモキシシリン水和物配合錠
2 レボフロキサシン水和物錠
3 ホスホマイシンカルシウム水和物錠
4 カナマイシン一硫酸塩カプセル
5 アジスロマイシン水和物錠


問201(物理・化学・生物)
前問の抗菌剤投与により、症状が改善し、SpO2が94%から97%になった。このSpO2の測定には、パルスオキシメータが用いられている。パルスオキシメータによるSpO2の測定及びその値に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。

1 パルスオキシメータによるSpO2の測定には赤色光と赤外光が用いられる。
2 酸素と結合したヘモグロビン(HbO2)と、酸素と結合していないヘモグロビン(Hb)の濃度は、どちらも測定時に用いられる2つの波長における吸光度より求められる。
スクリーンショット 2022-07-05 18.14.41.png
4 原理的に親指、人差し指、小指で測定したSpO2値に違いはない。
5 この患者の動脈血酸素分圧(PaO2)は、抗菌剤投与によって1.03倍(=97/94)になった。

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問200 解答 2、5

市中肺炎の薬物治療としては一般的に、β-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬、マクロライド系薬、レスピラトリーキノロン(呼吸器への移行が良好なニューキノロン系薬)などが用いられる。
なお、本患者は副作用歴にペニシリン系抗生物質により発疹とあることから、マクロライド系薬のアジスロマイシン水和物錠とレスピラトリーキノロンのレボフロキサシン水和物錠が推奨される。


問201 解答 5

パルスオキシメータは、指先または耳たぶに2種類の光(赤色光と赤外光)を当てて、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)を非観血的に連続測定する装置である。

1 正しい
パルスオキシメータによるSpO2の測定には赤色光と赤外光が用いられる。パルスオキシメータでは、赤色光を用いたときのヘモグロビンの吸光度は酸素と結合していないヘモグロビン(Hb)の方が大きいが、赤外光を用いたときのヘモグロビンの吸光度は酸素と結合したヘモグロビン(HbO2)の方が大きくなることが利用されている。

2 正しい
酸素と結合したヘモグロビン(HbO2)と、酸素と結合していないヘモグロビン(Hb)の濃度は、どちらも測定時に用いられる2つの波長における吸光度より求められる。

(計算例)
赤色光における吸光度をA赤色とすると、ランベルトベールの法則より①式が成り立つ。

A赤色=ε赤色HbO2×[HbO2l+ε赤色Hb×[Hb]×l   ・・・①
 ε赤色HbO2:赤色光を用いた場合のHbO2の吸光係数
 ε赤色Hb:赤色光を用いた場合のHbの吸光係数
 l:セルの長さ

赤外光における吸光度をA赤外とすると、ランベルトベールの法則より②式が成り立つ。

A赤外=ε赤外HbO2×[HbO2lε赤外Hb×[Hb]×l   ・・・②
 ε赤外HbO2:赤外光を用いた場合のHbO2の吸光係数
 ε赤外Hb:赤外光を用いた場合のHbの吸光係数
 l:セルの長さ

①式と②式の連立方程式を解くことで、[HbO2]と[Hb]を下記のように求めることができる。

スクリーンショット 2022-07-05 18.11.11.png

3 正しい
経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)とは、動脈血中のヘモグロビンのうち、酸素と結合したヘモグロビン(HbO2)の割合を表すものであり、下記の公式で定義される。

スクリーンショット 2022-07-05 18.11.52.png

4 正しい
原理的には、どの指で測定してもSpO2値に違いはない。
ただし、血流状態が指によって大きく異なる場合はSpO2値に違いがでてくるため、最も血流状態の良い指を選んで測定する必要がある。

5 誤っている
経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)の値と動脈血酸素分圧(PaO2)の値には正の相関があるが、直線性を示すものではないため、SpO2が94%から97%になった際に動脈血酸素分圧(PaO2)が1.03倍(=97/94)になるとは言えない。

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