令和04年度 第107回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 329

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問 329  正答率 : 64.5%

 国家試験問題

国家試験問題
45歳女性。人間ドックで膵がんの疑いを指摘され、大学病院を受診し、検査の結果、膵がん(遠隔転移あり)と診断された。1次化学療法としてFOLFIRINOX療法による治療を開始するにあたり、遺伝子多型を検査したところ、UGT1A1*6ヘテロ接合体であった。初回投与(1コース目)は以下の投与量で実施した。その後、下痢(1日2回程度)が見られたが、止瀉薬を内服することで対応可能であった。しかし、血液検査の結果、2コース目の化学療法は1週間延期された。

(1コース目投与量)
FOLFIRINOX: オキサリプラチン点滴静注(85 mg/m2
イリノテカン塩酸塩水和物点滴静注(180 mg/m2
フルオロウラシル急速静注(400 mg/m2
フルオロウラシル持続静注(2,400 mg/m2
レボホリナートカルシウム水和物点滴静注(200 mg/m2

(2コース目投与予定日の血液検査値)
総ビリルビン1.1 mg/dL、AST 24 IU/L、ALT 22 IU/L、BUN 22.9 mg/dL、
血清クレアチニン値0.9 mg/dL、赤血球数270×104 /µL、
白血球数1,690 /µL、好中球数820 /µL、Hb 12.2 g/dL、
血小板数21.4×104 /µL

(2コース目投与予定日から1週間延期した日の血液検査値)
総ビリルビン0.8 mg/dL、AST 27 IU/L、ALT 23 IU/L、BUN 18.5 mg/dL、
血清クレアチニン値0.5 mg/dL、赤血球数355×104 /µL、
白血球数4,230 /µL、好中球数1,910 /µL、Hb 13.6 g/dL、
血小板数28.6×104 /µL

2コース目投与予定日から1週間延期した日の血液検査結果をもとに、カンファレンスを実施した。薬剤師が医師に提案する内容として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。

1 イリノテカン塩酸塩水和物を減量して投与する。
2 レボホリナートカルシウム水和物を減量して投与する。
3 化学療法当日に人血小板濃厚液を投与し、イリノテカン塩酸塩水和物は初回と同量で投与する。
4 化学療法当日にG−CSF製剤を投与し、イリノテカン塩酸塩水和物は初回と同量で投与する。
5 今回も化学療法は延期する。

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問 329    

 e-REC解説

解答 1

FOLFIRINOX療法において用いられるイリノテカンは、生体内でカルボキシルエステラーゼにより活性代謝物SN−38に加水分解され薬効を示す。SN−38は、UGT1A1によりグルクロン酸抱合されることで主に代謝されるが、本患者のようにUGT1A1の遺伝子多型を持つ患者は、UGT1A1によるグルクロン酸抱合能が低下しているためSN−38の代謝が遅延し好中球減少などの重篤な副作用が発現する可能性が高くなる。
また、FOLFIRINOX療法は好中球減少などの骨髄機能抑制が現れやすく、2コース目以降の投与可能条件の1つに「好中球数が1,500 /µL以上」が設定されている。本患者は、2コース目投与予定日の好中球数が820 /µLであったため2コース目の化学療法は1週間延期されているが、今回は2コース目投与予定日から1週間延期した日の好中球数が1,910 /µLと回復したため、2コース目の化学療法が開始できる。
ただし、FOLFIRINOX療法において2コース目以降の投与可能条件を満たさず投与を延期した場合、イリノテカンを優先的に減量する必要があるため、薬剤師は「イリノテカン塩酸塩水和物を減量して投与する」ことを医師に提案するべきである。
なお、FOLFIRINOX療法において、フルオロウラシルの作用増強目的で加えられているレボホリナートカルシウム水和物は減量せず、フルオロウラシルの投与が中止された場合にのみ中止する。

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