令和04年度 第107回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 210,211

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問 210  正答率 : 59.3%
問 211  正答率 : 47.0%

 国家試験問題

国家試験問題
35歳女性。喫煙歴15年(1日20本)。以前から、ニコチンガムやニコチンパッチによる禁煙を試みたが失敗を繰り返していた。今回、禁煙外来を受診し、ニコチン受容体の部分刺激薬であるバレニクリン酒石酸塩錠による禁煙を試みることになった。女性は、医療機関でニコチン置換療法とは異なる治療法であると説明を受け禁煙に意欲的だが、また失敗するのではないかと不安にもなっている。

問210(実務)
薬剤師は患者の不安を和らげるため、今回の禁煙療法の特徴について説明した。説明内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 ニコチン置換療法と異なり、治療開始時は薬を服用しながら喫煙が可能です。
2 ニコチンを補充しないので、治療中に抑うつ気分や不安、イライラが強く出ることがありますが、一時的なものですので、そのまま服用を続けてください。
3 お薬にはニコチンが含まれていませんが、禁煙による離脱症状やタバコに対する切望感が軽減します。
4 途中で禁煙がつらくなったときは、ニコチンパッチ剤との併用療法に切り替えることができます。
5 ニコチンガムと同じように、主に口腔粘膜から有効成分が吸収されるので、炭酸飲料やコーヒーでの服用は避けてください。


問211(物理・化学・生物)
禁煙療法に用いられた薬物の構造から、ニコチン性アセチルコリン受容体との相互作用に関わる化学的性質として、正しいのはどれか。2つ選べ。

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1 バレニクリンの共役酸のpKaは4付近である。
2 共に生体内でカチオン性を示す窒素原子をもつ。
3 バレニクリンには鏡像異性体が存在する。
4 ニコチンの不斉炭素はR 配置である。
5 ニコチンのsp2混成窒素は水素結合受容体として働く。

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問 210    
問 211    

 e-REC解説

問210 解答 1、3

1 正
禁煙補助薬のバレニクリン酒石酸塩錠は、禁煙開始予定の1週間前から服用を開始するため、治療開始時は本剤を服用しながら喫煙が可能である。

2 誤
バレニクリン酒石酸塩錠の副作用に抑うつ気分や不安、イライラなどの精神的不安がある。このような症状が強く現れた際は、本剤の服用を中止し、直ちに医師に連絡するよう患者に説明する。

3 正
バレニクリンは、α4β2ニコチン性アセチルコリン受容体に対する部分作動薬であり、受容体への拮抗作用と刺激作用をともに有する。拮抗作用として、本剤が受容体に結合することでニコチンの受容体への結合を妨げ、喫煙による満足感を抑制する。刺激作用としては、本剤が受容体に結合することで少量のドパミンが放出され、禁煙に伴う離脱症状やタバコに対する切望感を軽減する。

4 誤
本剤の有効性及び安全性は単剤投与により確認されており、他の禁煙補助薬と併用した際の有効性は検討されておらず、安全性についても経皮吸収ニコチン製剤との併用時に副作用発現率の上昇が認められている。したがって、本剤とニコチンパッチ剤は併用できない旨を説明する。

5 誤
バレニクリンは、ニコチン製剤のように有効成分が口腔粘膜から吸収されるわけではなく、消化管より吸収される。そのため、炭酸飲料やコーヒーでの服用は避ける旨の説明は不要である。


問211 解答 2、5

1 誤
バレニクリンは塩基性薬物であり、その共役酸のpKaは9付近である。

2 正
バレニクリンとニコチンはともに塩基性を示す窒素原子を有するため、生体内でプロトン(H)化されることにより、カチオン性を示す窒素原子となる。

3 誤
バレニクリンは、分子内対称面を有するアキラルな化合物であるため、鏡像異性体が存在しない。

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4 誤
ニコチンの不斉炭素はS 配置である。

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5 正
窒素原子と他分子の水素原子が水素結合する際、窒素原子は水素結合の受容体(アクセプター)として働き、−OH基や−NH2基などの正に偏った水素原子は水素結合の供与体(ドナー)として働く。

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