令和04年度 第107回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 250,251

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問 250  正答率 : 84.3%
問 251  正答率 : 90.7%

 国家試験問題

国家試験問題
64歳女性。8年前に朝の手指のこわばり、多関節痛が出現し、近医にて関節リウマチと診断された。メトトレキサート(6 mg/週)でコントロールされていたが、1ヶ月前より関節症状が悪化したため入院した。入院時検査では、腫脹関節10ヶ所、圧痛関節6ヶ所、赤血球沈降速度112 mm/h、CRP 8.5 mg/dLであったことから疾患活動性が高いと判断され、インフリキシマブ(3 mg/kg)を併用することになった。なお、体温37.2℃、血圧94/58 mmHg、脈拍数80拍/分、ALT 80 IU/L、AST 88 IU/Lであった。

問250(実務)
この患者の治療における薬剤師の対応として、誤っているのはどれか。1つ選べ。

1 入院時検査で軽度肝機能障害が認められるので、ホリナートカルシウム錠の投与を医師に提案した。
2 この患者のB型肝炎ウイルス感染の有無を確認した。
3 この患者の結核の既往の有無を確認した。
4 インフリキシマブ投与によりinfusion reactionが認められた場合は、メトトレキサートの増量が必要と医師に情報提供した。
5 咳や喉の痛み等風邪の症状が出た場合は、すぐに医師、看護師、薬剤師等に連絡するように患者に伝えた。


問251(薬理)
メトトレキサートとインフリキシマブを投与した場合、この患者で期待される効果の機序はどれか。2つ選べ。

1 TNF−αの作用が阻害され、関節滑膜細胞の増殖が抑制される。
2 ジヒドロ葉酸還元酵素の阻害によりリンパ球の増殖が抑制され、中和抗体の産生が抑制される。
3 シクロオキシゲナーゼの阻害によりプロスタグランジン合成が抑制され、疼痛が緩和される。
4 IL−6受容体が遮断され、破骨細胞の分化が抑制される。
5 炎症局所のアデノシン受容体が遮断され、炎症反応が抑制される。

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問 250    
問 251    

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問250 解答 4

1 正しい
本患者は、検査値ALT 80 IU/L、AST 88 IU/Lから、服用中のメトトレキサートによる肝障害が疑われる。メトトレキサートによる肝障害が発現した場合、メトトレキサートの解毒薬であるホリナートカルシウムを投与することとされているため、薬剤師の対応として正しい。なお、ホリナートカルシウムは、活性型葉酸(THF)の前駆体であり、投与後細胞内に取り込まれ、THFに変換されることで、メトトレキサートによって低下したTHFを補充し細胞の核酸合成を再開させるため、メトトレキサートの毒性を軽減させる。

2 正しい
メトトレキサートとインフリキシマブは、両薬剤とも免疫抑制作用があるため、B型肝炎ウイルスの再活性化が報告されている。インフリキシマブは、投与に先立って、B型肝炎ウイルス感染の有無を確認することとされているため、薬剤師の対応としては正しい。

3 正しい
インフリキシマブは、投与により、結核などの重篤な感染症の悪化等があらわれることがあり、これらの情報を患者に十分説明し、患者が理解したことを確認した上で、治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与することとされているため、薬剤師の対応としては正しい。

4 誤っている
インフリキシマブ投与によりinfusion reactionが認められた場合は、投与を中止し、適切な処置を行うこととされているため、薬剤師の対応としては不適切である。

5 正しい
メトトレキサートは、副作用として骨髄抑制による無顆粒球症を起こすことがあり、無顆粒球症の初期症状である咳や喉の痛み等の症状がでた場合には減量、休薬等の適切な処置を行うこととされているため、薬剤師の対応としては正しい。


問251 解答 1、2

1 正
インフリキシマブの機序である。インフリキシマブは、キメラ型抗ヒトTNF−αモノクローナル抗体であり、TNF−αと特異的に結合することにより、TNF−αの作用が阻害され、関節滑膜細胞の増殖が抑制される。

2 正
メトトレキサートの機序である。メトトレキサートは、葉酸を核酸合成に必要な活性型葉酸に還元させる酵素(ジヒドロ葉酸還元酵素)の働きを阻害し、チミジル酸合成及び、プリン合成系を阻害してリンパ球の増殖が抑制される。また、メトトレキサートは、中和抗体(キメラ型モノクローナル抗体のインフリキシマブを投与した時に生成され、インフリキシマブの作用を減弱させる原因となる)の産生を抑制する。

3 誤
インドメタシンなどのNSAIDsの機序である。インドメタシンは、シクロオキシゲナーゼ(COX)の阻害により、プロスタグランジンE2合成が抑制され、疼痛が緩和される。

4 誤
IL−6受容体に結合する薬物として、トシリズマブなどがある。トシリズマブは、ヒト化抗ヒトIL−6受容体モノクローナル抗体であり、IL−6受容体に結合し、IL−6の活性の発現を抑制する。

5 誤
アデノシン濃度上昇を介して抗炎症作用を示す薬物として、メトトレキサートがある。メトトレキサートは、炎症局所のアデノシン濃度を上昇させ、アデノシンA2A受容体を介して炎症反応が抑制される。

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