薬剤師国家試験 令和07年度 第110回 - 一般 実践問題 - 問 220,221
40歳女性。全身倦怠感が続いたため、近医を受診した。血液検査の結果は以下のとおりであった。
(血液検査)
赤血球424×104 /µL、白血球4,800 /µL、
Hb 9.0 g/dL、Ht(ヘマトクリット)32.5%、
MCV(平均赤血球容積)76.7 fL(基準値80〜100 fL)、
MCH(平均赤血球血色素量)21.2 pg(基準値27〜34 pg)、
MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)27.7%(基準値30〜35%)、
フェリチン4.2 ng/mL(基準値5〜157 ng/mL)、
総鉄結合能(TIBC)550 µg/dL(基準値250〜460 µg/dL)、
不飽和鉄結合能(UIBC) ア µg/dL(基準値150〜385 µg/dL)
この検査結果を受け、医師から以下の薬が処方された。

問220(実務)
この患者の検査結果及び薬物治療について、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 血液検査の結果から、巨赤芽球性貧血であると考えられる。
2 薬で便が黒くなることがあるため、事前に情報提供しておく必要がある。
3 この薬の頻度の高い副作用に血栓塞栓症がある。
4 血清鉄量が改善されたら、この薬は速やかに服用を中止する。
5 薬を食後服用としているのは、悪心・嘔吐の副作用を軽減させるねらいがある。
問221(物理・化学・生物)
この患者に当てはまるのはどれか。2つ選べ。
1 ア の数値は、UIBCの基準値より低い。
2 血清フェリチン値が基準値より低いことから、貯蔵鉄が不足している。
3 血中トランスフェリン濃度は、基準値よりも低い。
4 服用した鉄剤は、3価の鉄イオンとして輸送体により腸管から吸収される。
5 消化管から吸収された鉄により、まず血清鉄量が増加し、遅れて貯蔵鉄量が増加する。
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問220 解答 2、5
1 誤
本患者の血液検査の結果より、Hb、Ht、MCV、MCHC、フェリチンが低値を示しており、また、クエン酸第一鉄ナトリウム錠が処方されていることから、本患者は鉄欠乏性貧血を発症していると考えられる。なお、巨赤芽球性貧血では、MCVが高値を示すため、本患者は巨赤芽球性貧血を発症しているとは考えにくい。
2 正
鉄製剤服用時、便が黒くなることがあるが、吸収されなかった鉄分が酸化されて便に出てきているだけであるため問題ない旨を、事前に情報提供しておく必要がある。
3 誤
本剤の一般的な副作用として、胃腸障害(悪心、嘔吐、心窩部痛など)が挙げられるが、血栓塞栓症の報告はない。なお、頻度の高い副作用に血栓塞栓症がある薬剤としては、経口避妊薬などのエストロゲン関連薬がある。
4 誤
鉄製剤の服用は、血清鉄量の改善後も継続し、血清フェリチン値が改善するまで継続する必要がある。
5 正
鉄剤を空腹時に投与すると吸収が最も良いが、胃腸障害(悪心、嘔吐、心窩部痛など)の副作用が出やすくなるため、食後服用が推奨されることが多い。
問221 解答 2、5
1 誤
鉄欠乏性貧血では、総鉄結合能(TIBC)や、不飽和鉄結合能(UIBC)は基準値を上回る。
2 正
血清フェリチンは、貯蔵鉄を反映する検査値である。鉄欠乏性貧血では、血清鉄、貯蔵鉄ともに低下するため、血清フェリチン値は低下する。
3 誤
鉄欠乏性貧血では、鉄の運搬能の向上をはかるため、トランスフェリン値の上昇がみられる。
4 誤
クエン酸第一鉄は、非イオン型鉄製剤であり鉄イオンを遊離しにくく、クエン酸とキレート形成したまま、小腸より吸収される。
5 正
消化管から吸収された鉄により、まず血清鉄量が回復し、その後、貯蔵鉄量の指標である血清フェリチンが回復する。
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