薬剤師国家試験 令和07年度 第110回 - 一般 実践問題 - 問 238,239
海外の規制当局より、メトホルミン塩酸塩を含有する製剤(特定のロット)からN−ニトロソジメチルアミン(NDMA)が検出されたとの発表があった。10年間にわたってメトホルミン塩酸塩含有製剤を服用してきた患者(体重50 kg)がこのニュースを見て来局し、健康に対するリスクを教えて欲しいという相談があった。そこで、公表されているNDMAの含有量を調べたところ、メトホルミン塩酸塩1,000 mg当たり0.08 µgのNDMAが含まれていることがわかった。薬剤師は、10年間服用した場合の発がんリスクを計算し、患者に伝えることとした。
問238(衛生)
この患者が、このメトホルミン塩酸塩含有製剤を、1日当たり1,500 mgの用量で10年間にわたって服用したとき、増加すると推定される発がんリスクに最も近い値はどれか。1つ選べ。
ただし、NDMAの実質安全量(体重50 kgの成人が生涯(70年間)曝露した場合に発がんリスクが1.0×10-5増加する曝露量)を0.1 µg/日とし、発がんリスクは服用量及び服用期間に比例するものとする。
1 1.0×10-7
2 1.7×10-7
3 5.9×10-7
4 1.7×10-6
5 5.9×10-5
問239(実務)
NDMAが検出されたメトホルミン塩酸塩を服用したことによるリスクは極めて低く、これまでに国内外において重篤な健康被害が発生したとの報告はない。
この患者に対する薬剤師の説明内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 NDMAによるがんの発症には、閾値があること。
2 摂取したNDMAの量は、実質安全量を下回っていること。
3 他の同種同効薬に変更する必要があること。
4 血糖値が落ち着いていれば服用を止め、次回受診時に医師に報告すること。
5 必要に応じて、発がんリスクに関する情報を医師に提供できること。
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問238 解答 4
問題文中より、メトホルミン1000 mg当たり0.08 µgのNDMAが含まれていることから、本患者の1日当たりの服用量1500 mgに含まれるNDMAの量は1500 mg/日×0.08 µg/1000 mg=0.12 µg /日となる。ここで、本患者において、NDMA 0.12 µg /日を10年間曝露した際の発がんリスクをXとする。
NDMAの実質安全量の記述より、NDMA 0.1 µg/日を70年間曝露すると発がんリスクが1.0×10-5増加することから、比例計算により
0.12 µg /日×10年間:0.1 µg/日×70年間=X:1.0×10-5
X=1.7×10-6となる。
問239 解答 2、5
1 誤
閾値とは、ある影響が発生するための最小量である。人体に有害な影響を与える化学物質については閾値が存在するものもあるが、発がん性物質についてはわずかな量の曝露でも発がんの可能性があるため、閾値は存在しない。
2 正
摂取したNMDA量は0.12 µg /日×10年であり、実質安全量である0.1 µg/日×70年を下回っている。
3 誤
摂取量は実質安全量を下回っており、これまでに国内外において重篤な健康被害が発生したとの報告はないことから、他の同種同効薬に変更する必要はないと考えられる。
4 誤
薬剤師の判断で服用薬を中止させることは適切ではない。むしろ、血糖値が落ち着いても自己判断で中止しないように説明する。
5 正
薬剤師は必要に応じて、発がんリスクに関する情報を医師に提供できる。
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