薬剤師国家試験 令和07年度 第110回 - 一般 実践問題 - 問 274,275
65歳男性。高血圧症及び気管支ぜん息に対して処方1及び処方2の薬剤を使用していた。

血圧が160/95 mmHg前後で推移していたため、テルミサルタン錠を80 mgに増量した。数日後、患者はめまいや頭痛を自覚したため、再来院した。血圧を測定したところ92/66 mmHgと低値を示した。
問274(薬剤)
テルミサルタン錠の添付文書には、本態性高血圧症の患者にテルミサルタン20 mg、40 mg及び80 mgをカプセル剤もしくは溶液として単回経口投与したときの薬物動態パラメータが示されており、40 mg以上の投与量で用量比以上の曝露の上昇がみられた旨の記載がある。テルミサルタンの投与量と血中濃度時間曲線下面積(AUC)の関係を示す図として、最も近いのはどれか。1つ選べ。
ただし、この薬物のAUCは剤形による影響を受けないものとする。

問275(実務)
テルミサルタン錠は40 mgに減量され自覚症状は消失したが、血圧が160/95 mmHgまで上昇した。そのため、他の降圧薬を追加することになった。追加する薬物として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 プロプラノロール塩酸塩
2 トリクロルメチアジド
3 ベラパミル塩酸塩
4 スピロノラクトン
5 アムロジピンベシル酸塩
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問274 解答 4
設問文より、「40 mg以上の投与量で用量比以上の曝露の上昇がみられた」とあるため、テルミサルタン20 mg、40 mg及び80 mgをカプセル剤もしくは溶液として単回経口投与したとき、40 mgまでは投与量と血中濃度時間曲線下面積(AUC)は比例し、それ以上では投与量の増加分以上にAUCは上昇すると考えられる。
よって、選択肢中のグラフにおいて投与量40 mgまでは比例関係、40 mg以上では比例関係から予想されるAUC値よりも大きな数値を示しているグラフは4となる。
問275 解答 2、5
1 誤
プロプラノロール塩酸塩は、本患者に対し追加する薬物として不適切である。プロプラノロール塩酸塩は、高血圧症に対して適応がある。しかし、β2受容体遮断作用により気管支平滑筋を収縮させ、ぜん息症状を誘発、悪化させる恐れがあるため気管支喘息の患者に対して禁忌である。
2 正
トリクロルメチアジドは、高血圧症には適応があり、本患者に対し追加する薬物として適切である。トリクロルメチアドは、遠位尿細管のNa+−Cl-共輸送体を阻害することによりNa+、Cl-の再吸収を抑制し、Na+の尿中排泄を増加させる。これに伴い、水の排泄を増加させ降圧作用を示す。
3 誤
ベラパミルは、高血圧症には適応がないため、本患者に対し追加する薬物として不適切である。ベラパミルは洞房結節と房室結節のCa2+チャネルを遮断することで、不整脈や虚血性心疾患の治療に用いられる。
4 誤
スピロノラクトンは、高血圧症には適応があるが、本患者に対し追加する薬物として不適切である。スピロノラクトンと本患者が服用しているエプレレノンはともにカリウムの排泄を抑制するため、この2剤を併用することにより血清カリウム値が上昇し、高カリウム血症が発症するおそれがある。そのため、両薬剤は併用禁忌である。
5 正
アムロジピンベシル酸塩は、高血圧症には適応があり、本患者に対し追加する薬物として適切である。アムロジピンは、血管平滑筋のカルシウムチャネルに選択的に結合し、細胞内へのCa2+の流入を減少させて、血管を拡張させることで降圧作用を示す。
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