薬剤師国家試験 令和07年度 第110回 - 一般 実践問題 - 問 280,281
65歳男性。身長165 cm、体重60 kg。腹痛及び背部痛を訴え、近医を受診した。血中膵酵素及び腫瘍マーカー(CA19-9、CEA)が高値であったため、超音波内視鏡検査を施行したところ、膵臓がんと診断された。治療切除が不能と判断され、胆道ドレナージが施行された。その後、化学療法としてGnP療法(ゲムシタビン・nab-パクリタキセル併用療法)で治療を行うことになった。

問280(実務)
処方1の薬剤による治療に関して、薬剤師が医療スタッフに伝える注意事項として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 投与前に好中球数及び血小板数が減少していないかを確認する。
2 ヒト由来成分に対する過敏症予防のための前投与が実施されたかを確認する。
3 投与時に血管痛が出た場合は、次回から懸濁に用いる液をブドウ糖液に変更する。
4 インラインフィルターを使用して投与することを確認する。
5 感染症伝播のリスクについての説明を患者に行ったかを確認する。
問281(薬剤)
処方1の薬剤に関する記述として、正しいのはどれか。1つ選べ。
1 有効成分とアルブミンを可逆的に結合することによって、血中で速やかに崩壊するナノ粒子とした。
2 腫瘍組織への集積性を高めるために、有効成分を生分解性高分子でマイクロカプセル化した。
3 有効成分とアルブミンを共有結合することによって、血中滞留性を改善した。
4 アルコールと界面活性剤の添加によって、有効成分の溶解性を改善した。
5 アルブミンの添加により膠質浸透圧を調整することで、副作用である血管痛を軽減した。
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問280 解答 1、5
1 正
本剤を投与した時の副作用として骨髄抑制があるため、投与前に好中球数及び血小板数が減少していないかを確認する必要がある。
2 誤
本剤は、ヒト由来成分のアルブミンを用いた製剤であるが、過敏症予防のための前投与は不要とされている。なお、過敏症予防のための前投与が必要とされている製剤は、ポリオキシエチレンヒマシ油及び無水エタノールを溶媒として使用したパクリタキセル製剤であり、本剤の添加剤に対する過敏症予防のためにステロイド剤や抗ヒスタミン剤の前投薬が必要とされている。
3 誤
本剤は必ず生理食塩液で懸濁して用いることとなっており、ブドウ糖液は使用しない。なお、投与時に血管痛が出た場合は、投与を一旦中止し、針を差し替えるなど適切な処置を行う。
4 誤
本剤に含まれるアルブミンが、フィルターに吸着し目詰まりを起こす可能性があるため、投与時にはインラインフィルターを使用しないこととされている。
5 正
本剤は添加物としてヒト血液由来成分を含有しているため、感染症の伝播を防止するための安全対策が講じられているが、ヒト血漿を原料としていることに由来する感染症伝播のリスクを完全に排除することができないことを、患者に説明し、理解を得るよう努めなければならない。
問281 解答 1
1 正
本剤は、水に難溶性のパクリタキセルをアルブミンに可逆的に結合させることによって、血中で速やかに崩壊するナノ粒子とした製剤である。
2 誤
本剤は生分解性高分子を含有していない。有効成分を生分解性高分子でマイクロカプセル化した製剤には、リュープリン®️注射用(リュープロレリン酢酸塩注射用)などがある。
3 誤
パクリタキセルとアルブミンの結合は可逆的であるため、共有結合ではない。
4 誤
本剤の添加剤は人血清アルブミンのみであり、アルコールや界面活性剤は添加されていない。他のパクリタキセル製剤(タキソール®️など)では、無水エタノールやポリオキシエチレンヒマシ油が添加されている。
5 誤
アルブミンの添加は膠質浸透圧を調整することが目的ではない。
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