薬剤師国家試験 令和07年度 第110回 - 一般 実践問題 - 問 286,287
67歳女性。既往歴及び服薬歴はない。大腿骨近位部骨折のため、1ヶ月間入院加療することになった。入院時の大腿骨骨密度は、若年成人平均値(YAM)の65%であり、血清カルシウム値9.6 mg/dL、血清リン値3.5 mg/dLであった。退院時に以下の治療薬が処方された。

約1ヶ月後に同病院の診察前の薬剤師外来にて服薬について患者にインタビューしたところ、服用を大変面倒と感じており、飲み忘れることが時々あるとのことであった。残薬を持参するよう患者に伝えたが、その後の外来受診でも持参しなかった。退院から約半年経過してようやく持参した薬剤を確認したところ、リセドロン酸ナトリウム錠は10錠、エルデカルシトール錠は50錠の残薬が求められた。
問286(病態・薬物治療)
この患者の病態及び治療に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 原発性の骨粗しょう症と考えられる。
2 発症に、カルシウム不足による骨基質の石灰化障害が関与している。
3 入院前は、骨吸収が骨形成を上回った状態と考えられる。
4 処方薬はいずれも横臥状態での服用が可能である。
5 エルデカルシトールは、リセドロン酸による低カルシウム血症を増強する。
問287(実務)
患者の服薬遵守状況が良好でなく、治療効果が十分得られていないことを医師に報告し、薬剤の変更などの提案を行うことになった。提案として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 リセドロン酸ナトリウム錠をラロキシフェン塩酸塩錠に変更
2 メナテトレノンカプセルの追加
3 リセドロン酸ナトリウム錠を月1回服用製剤に変更
4 リセドロン酸ナトリウム錠からテリパラチド皮下注(1日1回)自己注射に変更
5 リセドロン酸ナトリウム錠からデノスマブ皮下注(6ヶ月1回)に変更
REC講師による詳細解説! 解説を表示
-
問286 解答 1、3
本患者は、
・大腿骨近位部骨折により入院し、その際の大腿骨骨密度はYAMの65%と低下
・年齢が67歳と高齢であり閉経していると考えられる
・既往歴及び服薬歴はない
・リセドロン酸Na錠やエルデカルシトール錠などの骨粗しょう症治療薬が処方されている
以上のことから、加齢や閉経に伴う原発性骨粗しょう症であると推測される。
1 正
前記参照
2 誤
骨粗しょう症は、骨密度低下により骨強度が低下し、骨折の危険性が増大する疾患である。なお、本選択肢は、骨軟化症に関する記述である。
3 正
本患者は入院前、閉経後のエストロゲンの分泌低下による骨吸収低下や、加齢による骨芽細胞の機能低下などに伴い、骨吸収が骨形成を上回った状態だったと推測される。
4 誤
リセドロン酸はビスホスホネート製剤であり、横臥状態で服用すると食道に長くとどまり、食道潰瘍を生じるおそれがあるため、服用は立位または座位にて十分量の水(コップ1杯分:約200 ml)で行い、服用後30分は臥床を避ける必要がある。
5 誤
リセドロン酸は、破骨細胞のアポトーシス誘導および機能喪失により骨吸収を抑制することで、副作用として低カルシウム血症を引き起こすおそれがある。一方、エルデカルシトールは活性型ビタミンD3製剤であり、腸管からのCa2+吸収を促進することで、血中Ca2+濃度を上昇させる。そのため、エルデカルシトールは、リセドロン酸による低カルシウム血症のリスクを軽減することができる。
問287 解答 3、5
患者からは「毎日の服用が面倒」との訴えがあり、リセドロン酸ナトリウム錠10錠、エルデカルシトール錠50錠の残薬がある。そのため、服用回数を減らしてアドヒアランスを改善させるよう、1日1回服用のリセドロン酸ナトリウム錠を月1回服用製剤に変更する(選択肢3)、もしくは6ヶ月に1回の使用で良いデノスマブ皮下注に変更する(選択肢5)、などの提案をするのが望ましい。
-
解説動画1 ( 12:36 )
再生速度
|
|
- この過去問解説ページの評価をお願いします!
-
評価を投稿