薬剤師国家試験 令和07年度 第110回 - 一般 実践問題 - 問 298,299
35歳男性。肘や膝に黄色っぽい隆起が見られるようになったため、心配になり医療機関を受診したところ、精査目的にて入院となった。身体所見及び検査値と家族歴は、以下のとおりであった。
(身体所見及び検査値)
身長168 cm、体重76 kg、血圧118/76 mmHg、LDL-C 262 mg/dL、
HDL-C 62 mg/dL、TG(トリグリセリド)145 mg/dL、
空腹時血糖 113 mg/dL、HbA1c 5.9 %、AST 102 IU/L、ALT 22 IU/L、
CK(クレアチンキナーゼ)4.215 IU/L
(家族歴)
父親が50歳で心筋梗塞を発症
また問診の結果、3ヶ月前に他の医療機関でLDLコレステロール高値を指摘されロスバスタチンにて治療を行っていたが、1ヶ月前から筋肉痛や脱力感を自覚するようになったため、最近1週間は自己判断で服用を中止していることが分かった。今回の診察で、肘や膝の皮膚の隆起は皮膚結節性黄色腫であることが判明し、アキレス腱にも顕著な肥厚が見られた(X線撮影により肥厚は9.0 mm)。
問298(実務)
この患者に対して薬剤師がアセスメントを行うために備えるべき知識として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 食事療法に際し、炭水化物エネルギー比を50〜60%とする。
2 運動療法を行う前に、動脈硬化性疾患のスクリーニングを実施する。
3 LDL-C管理目標値は120 mg/dLである。
4 半年に一度のLDLアフェレシスを提案する。
5 筋肉痛と脱力感は、ロスバスタチンを継続投与しても自然に消失する。
問299(病態・薬物治療)
検査所見と診察の結果から判断してロスバスタチンを変更することになった。変更後の治療薬として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 ピタバスタチン
2 エゼチミブ
3 ペマフィブラート
4 エボロクマブ
5 イコサペント酸エチル
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問298 解答 1、2
本患者は、検査所見でLDL-Cが262 mg/dLと高値(基準値:140 mg/dL)を示していること、身体所見で皮膚結節性黄色腫やアキレス腱肥厚が認められること、家族歴として父親(第一度近親者)に早発性冠動脈疾患の発症があることから、家族性高コレステロール血症が疑われる。
1 正
家族性高コレステロール血症の治療の目的は、動脈硬化性疾患の予防と進展の阻止である。そのため、家族性高コレステロール血症の食事療法では、炭水化物のエネルギー比率を50〜60%、脂質のエネルギー比率を20〜25%に設定し、動脈硬化予防をはかる。
2 正
家族性高コレステロール血症患者は、動脈硬化性疾患のリスクが高いため、運動療法を始める前に、動脈硬化性疾患のスクリーニングが必要である。問診、心電図、運動負荷心電図、心エコー検査や足関節上腕血圧比等を行って動脈硬化性疾患の評価を行い、冠動脈疾患や大動脈弁狭窄症、末梢動脈疾患が疑われるときには、適切な治療を十分に行ってから運動療法を開始する。
3 誤
家族性高コレステロール血症のLDL-C管理目標値は、一次予防で100 mg/dL未満、二次予防で70 mg/dL未満である。
4 誤
LDLアフェレシスとは、体外循環装置を用いて血液からLDLを除去する方法である。一般にLDLアフェレシスは1〜2週間に1回の頻度で実施される。
5 誤
本患者は3ヶ月前よりロスバスタチンによる治療が行われており、1ヶ月前から筋肉痛や脱力感の訴えがあり、さらに今回の診察でASTが102 IU/L(基準値:10〜40 IU/L)、CKが4.215 IU/L(基準値:50〜250 IU/L)と共に高値を示していたことから、ロスバスタチンによる横紋筋融解症を発症していたと考えられる。横紋筋融解症が現れた場合は、直ちに原因薬物の投与を中止する必要がある。
問299 解答 2、4
家族性高コレステロール血症の薬物治療の第一選択薬はロスバスタチンなどのHMG-CoA還元酵素阻害薬である。ただし、HMG-CoA還元酵素阻害薬で十分な効果が得られない場合は、エゼチミブやエボロクマブなどのPCSK9阻害薬、コレスチミドなどの陰イオン交換樹脂、プロブコールなどを追加する。
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解説動画1 ( 09:20 )
解説動画2 ( 02:29 )
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