薬剤師国家試験 令和07年度 第110回 - 一般 実践問題 - 問 326
40歳男性。身長172 cm、体重70 kg。今回、生体腎移植を受けるために入院した。移植後の拒絶反応予防のために、以下の処方が開始された。

服薬開始後10日目の服薬指導時、薬剤師に下痢の訴えがあった。
訴えに対する薬剤師の薬学的管理事項として、誤っているのはどれか。1つ選べ。
1 口の渇き、尿量の変化を確認
2 ミコフェノール酸モフェチルの血中濃度測定依頼を提案
3 メチルプレドニゾロン錠の中止を提案
4 症状軽減のために半夏瀉心湯エキス顆粒の処方提案
5 感染症確認のために便培養依頼を提案
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解答 3
免疫抑制薬(タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、メチルプレドニゾロン)を服用すると、免疫抑制による腸管感染や腸内細菌叢の変化、免疫抑制薬そのものによる腸粘膜の毛細血管障害などにより重度の下痢を起こすことがある。
1 正しい
下痢による脱水の評価を行うために口の渇きや尿量の変化を確認することは適切である。
2 正しい
ミコフェノール酸モフェチルは投与1〜2週間後に下痢を起こしやすいことが知られており、今回の下痢がミコフェノール酸モフェチルの血中濃度上昇による可能性があるため、ミコフェノール酸モフェチルの血中濃度測定依頼を提案することは適切である。
3 誤っている
メチルプレドニゾロンなどのステロイド薬は、急に中止すると離脱症状が現れる可能性が高く、下痢の原因がメチルプレドニゾロン錠と定まっているわけではないため、本剤の中止を提案することは不適切である。
4 正しい
ミコフェノール酸モフェチル(MMF)による下痢は代謝産物であるミコフェノール酸(MPA)が腸管粘膜を傷害することにより発症すると考えられている。MPAは肝臓でグルクロン酸抱合を受けミコフェノール酸グルクロニド(MPAG)となり胆汁排泄されるが、腸管内で腸内細菌のβ−グルクロニダーゼによる脱抱合を受けてMPAに戻る。半夏瀉心湯はβ−グルクロニダーゼを阻害し、腸管内でMPAGがMPAに戻る反応を抑制することで下痢の発症を防ぐと考えられている。したがって、症状軽減のために半夏瀉心湯エキス顆粒の処方提案をすることは適切である。
5 正しい
サイトメガロウイルス感染症などによる下痢の可能性があるため、感染症確認のために便培養依頼を提案することは適切である。
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