薬剤師国家試験 令和07年度 第110回 - 一般 実践問題 - 問 328
5歳男児。37℃の微熱と咽頭痛があり、近医を受診したが、翌日に39.2℃まで上昇し、眼球結膜の充血及び全身に赤い発疹が出現したために近医より大学病院を紹介され受診した。心臓超音波検査の結果、右冠動脈径4.1 mmと拡大を認め、川崎病と診断された。入院後より大量免疫グロブリン静注療法とアスピリンの内服を開始した。翌日には解熱し、1週間後にはほぼ症状は消失した。心臓超音波検査で右冠動脈径3.8 mmと縮小傾向を確認し、2週間後に退院となった。アスピリンは退院後も継続処方となっている。
薬剤師が退院時に患者家族へ伝える内容として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 免疫グロブリン静注療法は、退院後も定期的に実施する必要がある。
2 アスピリンは、退院後も血栓予防のために服用することが重要である。
3 アスピリンは、入院中と同じ用法・用量で服用する。
4 アスピリン服用中に、インフルエンザと診断された場合には、すぐに主治医に連絡する。
5 麻しん、風しんワクチンは、退院後速やかに接種しても差し支えない。
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解答 2、4
川崎病は、主に4歳以下の乳幼児にみられる原因不明の血管炎であり、発熱、発疹、冠動脈瘤、眼球結膜の充血などの症状が認められる。発熱がある場合、炎症を抑え冠動脈病変を予防するため、早期に標準治療(免疫グロブリン静注(IVIg)療法+アスピリン)を開始する。なお、重症例では、副腎皮質ステロイドやシクロスポリンなどを併用する。
1 誤
大部分の急性期患者はIVIg療法開始後1〜2日で解熱するため、退院後も定期的にIVIg療法を実施する必要はない。なお、1回のIVIg療法で解熱しなかった場合は、IVIg再投与を行い、再投与でも解熱しなかった場合には、副腎皮質ステロイドやシクロスポリンの投与、血漿交換療法などを行う。
2 正
川崎病発症後、数ヶ月間は血小板凝集能が亢進しているため、退院後も血栓予防のため2〜3ヶ月間はアスピリンを継続服用する必要がある。その後、断層心エコー図等の冠動脈検査で冠動脈障害が認められない場合には、アスピリンの投与を中止する。
3 誤
通常、急性期有熱期間には抗炎症作用を目的としてアスピリンを中等量(30〜50 mg/kg/日)で投与するが、解熱後の回復期から慢性期には、抗血小板凝集作用を目的として低用量(3〜5 mg/kg/日)で投与する。
4 正
インフルエンザに罹患している15歳未満の者がアスピリンを服用すると嘔吐、意識障害、肝障害、脳障害などを伴うライ症候群を引き起こすおそれがあるため。よって、アスピリン服用中にい、インフルエンザと診断された場合には、すぐに主治医に連絡する必要がある。
5 誤
免疫グロブリン製剤にはさまざまな抗体が含まれているため、IVIg療法を受けた直後は生ワクチンの効果が減弱する。そのため、IVIg療法後に麻しん、風しん、水痘、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)などの生ワクチンを接種する場合は、6ヶ月以上間隔をあける必要がある。
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