薬剤師国家試験 平成28年度 第101回 - 一般 実践問題 - 問 202,203
45歳男性。下記の処方箋を保健薬局に持参した。薬剤師がインタビューしたところ、患者は「医師からはピロリ菌の一次除菌と聞いている」と回答した。
問202(実務)
処方監査による判断として、正しいのはどれか。1つ選べ。
1 1日1回朝食後を1日1回朝食前に変更する。
2 1日1回朝食後を1日1回夕食後に変更する。
3 それぞれの薬剤の1日量を2倍にして、1日2回朝夕食後に変更する。
4 7日分を3日分に変更する。
5 7日分を14日分に変更する。
問203(物理・化学・生物)
ヘリコバクター・ピロリ菌の感染診断には尿素呼気試験法が用いられる。この方法は、13Cで標識した尿素を服用し、ピロリ菌が持つウレアーゼ活性で生じる呼気中の二酸化炭素を赤外吸収スペクトル法で検出するものである。これに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 赤外線は紫外線よりも短波長である。
2 赤外線は分子振動によって双極子モーメントが変化するときに吸収される。
3 赤外吸収スペクトル法では、紫外可視吸光度法とは異なり、ランベルト-ベール(Lambert-Beer)の法則が成立しない。
4 13CO2の逆対称伸縮振動は12CO2と比べ低い波数側に検出される。
5 12CO2の測定には2350 cm-1付近の吸収が用いられ、これは指紋領域に含まれる。
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問202 解答 3
ヘリコバクター・ピロリの一次除菌では、通常、成人にはオメプラゾールとして1回20 mg、クラリスロマイシンとして1回200 mg(力価)及びアモキシシリン水和物として1回750 mg(力価)の3剤を同時に1日2回、7日間経口投与する。
このことから、処方薬を1日1回朝食後に投与するのではなく、それぞれの薬剤の1日量を2倍にして、1日2回朝夕食後に変更する必要がある。
なお、上記の方法で、1次除菌に失敗した場合には、クラリスロマイシンをメトロニダゾールに変更し、1日2回、7日間経口投与する(2次除菌)。
問203 解答 2、4
1 誤
赤外線の波長は2.5〜25 µm、紫外線の波長は10〜400 nmである。よって、赤外線は紫外線よりも長波長である。
2 正
赤外線の有するエネルギーは、分子の振動エネルギー準位に相当し、赤外線の吸収は、分子の振動によって双極子モーメントが変化する際に認められる。
3 誤
ランベルト-ベール(Lambert-Beer)の法則とは、希薄溶液において、吸光度は濃度及び層長に比例するという法則のことであり、紫外可視吸光度法と同様に赤外吸収スペクトル法でも成立する。
4 正
一般に質量数の大きい原子の振動数は、質量数の小さい原子に比べ、低波数を示す。13Cと12Cの質量を比較すると、13C>12Cであることから、13CO2の逆対称伸縮振動は12CO2と比べ低い波数側に検出される。
5 誤
12CO2の測定には2350 cm-1付近の吸収が用いられ、これは特性吸収帯に含まれる。
赤外吸収スペクトル法において、波数1500 cm-1以上の領域を特性吸収帯、波数1500 cm-1以下の領域を指紋領域という。特性吸収帯は、主として伸縮振動が現れる領域で、吸収位置から化合物中に含まれる官能基が推定でき、指紋領域は、主として変角振動が現れている領域で、物質固有の複雑なスペクトルパターンを示すため、物質の同定に利用される。
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