薬剤師国家試験 平成27年度 第100回 - 一般 理論問題 - 問 98
キャピラリー電気泳動に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 中性の電解質溶液を満たしたフューズドシリカ製キャピラリーの内壁は、シラノール基の解離により正電荷を帯びる。
2 フューズドシリカ製キャピラリーと中性の緩衝液を用いて電気泳動を行うと、陰イオン性物質は中性物質よりも速く泳動される。
3 ミセル動電クロマトグラフィーでは、泳動液にイオン性界面活性剤を添加することで、中性物質の分離が達成される。
4 キャピラリーゾーン電気泳動では、泳動液のpHが高いほど、中性試料成分の泳動速度が遅くなる。
5 キャピラリーゲル電気泳動でDNAを分離すると、サイズの小さなものから順に検出される。
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解答 3、5
1 誤
フューズドシリカ(溶融石英)製キャピラリーの内壁のシラノール基(Si−OH)は、pH3以上で解離する。そのため、中性(pH7)の電解質溶液を満たしたフューズドシリカ製キャピラリーの内壁は、解離したシラノール基(Si−O−)により負に帯電し、陽イオンは内壁表面近くに引き寄せられて電気二重層を形成する。この状態のキャピラリーの両端に電圧をかけると、内壁表面の陽イオンは陰極方向に移動し、それに伴ってキャピラリー内部の溶液全体が陽極から陰極方向へ移動する。 この現象を電気浸透といい、これにより生じる流れを電気浸透流という。
2 誤
フューズドシリカ製キャピラリーと中性の緩衝液を用いて電気泳動を行うと、電気浸透流が発生する(解説1参照)。この電気浸透流を利用し、物質を分離する方法をキャピラリーゾーン電気泳動という。本法により、陰イオン性、中性物質を分離すると、陰イオン性物質は電気浸透流と逆向きの力(陽極に引き寄せられる力)の影響を受けながら泳動されるため、中性物質よりも遅く泳動される。
3 正
ミセル動電クロマトグラフィーとは、泳動液に陰イオン性界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム)を添加し、電気泳動を行う方法のことである。
疎水性の中性物質は、陰イオン性界面活性剤が形成するミセルに取り込まれやすく、負に帯電しやすい。また、親水性の中性物質は、陰イオン性界面活性剤が形成するミセルに取り込まれにくく、負に帯電しにくい。この差により、ミセル動電クロマトグラフィーでは、中性物質を分離することが可能である。
4 誤
キャピラリーゾーン電気泳動では、泳動液のpHが高いほど、キャピラリーの内壁にあるシラノール基(Si−OH)が解離しやすくなる。そのため、泳動液のpHが高いほど、電気浸透流の速度が速くなり、中性試料成分の泳動速度が速くなる。
5 正
キャピラリーゲル電気泳動とは、キャピラリー内にゲル(ポリアクリルアミドゲルやアガロースゲルなど)を充填し、電気泳動を行う方法のことである。キャピラリーゲル電気泳動では、充填されたゲルによる分子ふるい効果により、主にDNA やタンパク質の分離を行うことが可能である。キャピラリー電気泳動によりDNAを分離するとゲルの抵抗を受けにくいサイズの小さいものから順に検出される。
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