薬剤師国家試験 平成28年度 第101回 - 一般 理論問題 - 問 139
下の図は、ある晴れた風がない冬の日の早朝、ある町の風景を示したものである。この町は平野にあり、左側には工場がある。この工場の煙突からは煙が出ており、ある高さから右の方にのびていた。このときの気象条件に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 このときの大気の安定度は、非常に低い状態だったと推測される。
2 放射冷却が発生した可能性が高い。
3 煙突付近の気温が地表付近の気温よりも高い可能性がある。
4 地表付近で汚染物質が発生しても、その濃度は速やかに低下する。
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解答 2、3
一般に、大気の温度は地表面より上昇するに伴い低下していくため、大気の下層の空気は暖かく、上層の空気は冷たくなる。暖かい空気より、冷たい空気の方が一般に比重が大きいため、空気の入れ替わりが起こり(乱流)、大気は不安定となる。大気が不安定な状態だと、大気汚染物質が拡散しやすくなるため、大気汚染は起こりにくくなる。一方、上層の空気が暖かく、下層の空気が冷たくなる状態のことを逆転層といい、逆転層の状態だと空気の入れ替わりが起こりにくくなるため、大気が安定化し、大気汚染は起こりやすくなる。
1 誤
煙突からの排煙がある高さから右の方にのびていることから、大気の安定度は高い状態だったと推測される。
2 正
放射冷却とは、地表面から熱の放射が起こることによって地表面の温度が低下し、地表面付近の気温が下がる現象のことをいい、放射冷却によって生じる逆転層を放射性逆転層という。放射性逆転層は、冬期、日没後に快晴となり、かつ無風状態(風速3 m/sec以下)になると翌朝に形成されやすい。問題文より「ある晴れた風がない冬の日の早朝」とあることから、放射冷却によって逆転層(放射性逆転層)を生じた可能性が高い。
3 正
放射性逆転層を生じている可能性が高いことから、煙突付近の気温が地表付近の気温よりも高い可能性がある。
4 誤
放射性逆転層の状態では、大気が安定化されているため大気汚染物質の拡散が抑えられる。その結果、地表付近で汚染物質が発生しても、その濃度は低下しにくい。
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