薬剤師国家試験 平成28年度 第101回 - 一般 実践問題 - 問 200,201
60歳女性。身長150 cm、体重45 kg。めまい、ふらつき、冷汗、軽度の意識障害を主訴として受診し、入院することとなった。入院時に病室を訪問した薬剤師が持参薬を確認したところ、下記の薬剤を日ごろ欠かさず服用していたことが分かった。入院時の血清クレアチニン値1.5 mg/dL、BUN 29 mg/dL、AST 25 IU/L、ALT 30 IU/L、PT-INR 2.0、空腹時血糖値40 mg/dLであった。
問200(実務)
薬剤師はこの女性の主訴の原因として、服用中の薬物の副作用を疑った。最も可能性の高い薬物はどれか。1つ選べ。
1 シベンゾリンコハク酸塩
2 ベラパミル塩酸塩
3 ワルファリンカリウム
4 ロキソプロフェンナトリウム
5 テプレノン
問201(物理・化学・生物)
患者に低血糖症状が疑われたため、血糖値を検査することになった。血中グルコースの測定法に関する記述として正しいのはどれか。2つ選べ。
1 市販の簡易血糖測定器に用いられる酵素には、グルコースオキシダーゼやグルコースデヒドロゲナーゼなどがある。
2 電極法では、グルコースから酵素反応により生じる過酸化水素をガラス電極で測定する。
3 屈折率を利用した糖度計によって測定する。
4 簡易カラムにより他の単糖とグルコースを分離し、エチジウムブロマイドにより蛍光測定する。
5 グルコースと酵素及びNADP+を反応させ、生じたNADPHを吸光度法により測定する。
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問200 解答 1
本患者に現れている症状(めまい、ふらつき、冷汗、軽度の意識障害)は、低血糖による症状である。
本患者が服用している薬物のうち、シベンゾリンコハク酸塩は、インスリン分泌促進作用を有するため、副作用として、低血糖症状をきたすことがある。そのため、この女性の主訴の原因として、最も可能性の高い薬物はシベンゾリンコハク酸塩である。
なお、以下の基準値からも、本患者は低血糖状態にあることがわかる。
血清クレアチニン値 1.5 mg/dL(基準値:0.5〜1.3 mg/L)
BUN 29 mg/dL(基準値:8〜20 mg/dL)
AST 25 IU/L(基準値:10〜35 IU/L)
ALT 30 IU/L(基準値:10〜40 IU/L)
PT–INR 2.0(基準値:1.0)*ワルファリン使用時は2.0〜3.0でコントロール
空腹時血糖値40 mg/dL(基準値:70〜110 mg/dL)
問201 解答 1、5
1 正
市販の簡易血糖測定器の測定原理として、酵素比色法及び酵素電極法が用いられている。酵素比色法には、グルコースオキシダーゼ/ペルオキシダーゼ(GOD/POD)比色法、酵素電極法には、グルコースオキシダーゼ(GOD)電極法及びグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)電極法がある。
2 誤
酵素電極法のグルコースオキシダーゼ(GOD)電極法では、グルコースが酵素により分解され、生じる過酸化水素を過酸化水素電極で測定する。
<グルコースオキシダーゼ(GOD)電極法における血中グルコース濃度測定>
グルコースがグルコースオキシダーゼ(GOD)により、グルコノラクトン及び過酸化水素に分解される。その後、発生した過酸化水素が過酸化水素電極で酸化される際、電流が発生する。このとき発生する電流量がグルコース濃度に比例することから、血中グルコース濃度を測定することができる。
3 誤
糖度計とは、屈折率、旋光度などを利用して、主に食品に含まれる糖の含量を測定する器具のことであり、血中グルコース濃度の測定には用いられない。
4 誤
エチジウムブロマイドは、DNAの蛍光検出試薬として用いられるものであり、グルコースの検出には用いられない。
5 正
グルコースにグルコースヘキソキナーゼ(HK)を反応させ、グルコース–6–リン酸とし、これにグルコース–6–リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)及びNADH+を反応させ、生じたNADPHの340 nm付近における吸光度を測定することでグルコース量を測定する方法がある。
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