薬剤師国家試験 平成28年度 第101回 - 一般 実践問題 - 問 214,215

35歳女性。体重45 kg。昨夜より40℃の発熱が続いたため、医療機関を受診した。発汗はなく、全身の関節がひどく痛かった。下記の生薬を含む漢方エキス細粒が処方された。なお、処方量は常用量である。


問214（実務）
この漢方処方について、薬剤師が留意すべき点として誤っているのはどれか。１つ選べ。

１　浮腫が出現することがある。
２　動悸を起こすことがある。
３　発汗を促すため、水分補給が必要である。
４　高カリウム血症を起こすことがある。
５　甲状腺機能亢進症の患者には、慎重に投与する必要がある。

問215（物理・化学・生物）
この処方に含まれるそれぞれの生薬の主成分A〜Dに関する記述のうち、正しいのはどれか。２つ選べ。



１　化合物Aは、芳香をもつ精油成分であり、化合物名は2-phenyl-1-propenalである。
２　化合物Bは、ステロイド代謝酵素を活性化し低カリウム血症を起こす。
３　化合物Cは、4種の立体異性体のうち、最も強い交感神経興奮作用を示す。
４　化合物Dは、加水分解を受けるとグルコース2分子、ベンズアルデヒド及び青酸を生じる。

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問214　解答　４

１　正しい
カンゾウに含まれるグリチルリチン酸は、偽アルドステロン症を引き起こすことがある。偽アルドステロン症では、ナトリウムの再吸収およびカリウムの排泄促進作用により、浮腫や高血圧、低カリウム血症などの症状を呈する。

２　正しい
マオウに含まれるエフェドリンは、交感神経興奮作用により、動悸や発汗過多を引き起こすことがある。

３　正しい
マオウは発汗過多を引き起こすことがあるため、水分補給により脱水症状を防ぐ必要がある。

４　誤っている
解説1参照。

５　正しい
甲状腺機能亢進症では、甲状腺ホルモンの過剰分泌により頻脈などの症状を呈する。マオウに含まれるエフェドリンは、交感神経興奮作用により頻脈などの症状を悪化させる恐れがあるため、甲状腺機能亢進症の患者には、慎重に投与する必要がある。



問215　解答　３、４

１　誤
化合物Aは、ケイヒの主成分のシンナムアルデヒドの構造である。主たる官能基としてアルデヒドを有し、母体は2-propenalとなる。また、この母体の3位にphenyl基が結合しているので、化合物名は3-phenyl-2-propenalである。




２　誤
化合物Bは、カンゾウの主成分のグリチルリチン酸の構造である。グリチルリチン酸は腸内細菌によって活性体であるグリチルレチン酸に変換され、ステロイド代謝酵素を阻害する作用をもつ。その結果、内因性糖質コルチコイドの作用が増強し、低カリウム血症を引き起こすことがある（偽アルドステロン症）。

３　正
化合物Cは、マオウの主成分のl-エフェドリンの構造である。エフェドリンは不斉炭素を2つ有するため、立体異性体が4種類存在し、このうち（1R,2S）の絶対配置をとるl体が最も強い交感神経興奮作用を示す。

４　正
化合物Dは、キョウニンの主成分のアミグダリンの構造である。アミグダリンは加水分解を受けるとグルコース2分子、ベンズアルデヒド及び青酸（シアン化水素）を生じる。

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