薬剤師国家試験 平成28年度 第101回 - 一般 実践問題 - 問 226,227
65歳女性。食道がんを切除後、経口による栄養補給が不可能となったため、高カロリー輸液(Total Parenteral Nutrition)療法が適用となった。
問226(実務)
2週間投与したところで、患者が病棟薬剤師に口内炎による痛みを訴えた。薬剤師は、ビタミンの補充が必要と判断した。このとき、補充を提案すべきビタミンとして適切なのはどれか。2つ選べ。
1 ビタミンA
2 ビタミンB2
3 ビタミンD
4 ビタミンE
5 葉酸
問227(衛生)
栄養素の補給に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 高カロリー輸液に含まれるビタミンB12が機能を発現するには、胃の内因子が必要である。
2 高カロリー輸液にビタミンB1を過剰に添加すると、ウェルニッケ脳症を引き起こす。
3 亜鉛の補給は、褥瘡の防止・早期修復に効果を示す。
4 高カロリー輸液にセレンを添加しないと、心機能異常を起こすことがある。
5 肝機能が著しく低下した患者の高カロリー輸液には、グルタミンを多く添加する必要がある。
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問226 解答 2、5
経口による栄養補給が不可能な場合、中心静脈を利用して高カロリー輸液(TPN)療法が行われる。その際、腸管を利用する経口での栄養補給を行わないことにより、腸内細菌叢のバランスが崩れ、腸内細菌が合成するビタミンなどの欠乏が生じてくる。そのため、代表的なビタミンの欠乏症を理解し、TPN療法施行中に現れるビタミン欠乏症に適切に対応する必要がある。
なお、本患者はTPN療法施行中に口内炎が現れていることから、ビタミンB2、葉酸が欠乏している可能性があるため、ビタミンB2及び葉酸の補充を提案すべきである。選択肢にあるビタミン欠乏症の代表的なものを以下にまとめておく。
問227 解答 3、4
1 誤
胃の内因子は、消化管からビタミンB12を吸収するのを促進する。そのため、胃の内因子は、経口でのビタミンB12補給には必要となるが、中心静脈を利用して非経口的に栄養補給を行う高カロリー輸液には不要である。
2 誤
ウェルニッケ脳症は、ビタミンB1の欠乏症である。TPN療法施行中のビタミンB1欠乏症としては、脚気や乳酸アシドーシスなどもあり注意が必要である。
3 正
亜鉛は、生体内において種々のタンパク合成などに関与しており、細胞の増殖や形態形成などに重要な栄養素である。そのため、亜鉛の補給は、褥瘡の防止・早期修復に効果を示す。
4 正
セレン欠乏症として、心電図異常や不整脈などの心機能異常がある。そのため、TPN療法施行時にはセレンを添加する必要がある。
5 誤
グルタミンの脱アミノ反応で生じたアンモニアは、肝臓で無害な尿素に代謝されることで尿中に排泄されるが、肝機能が著しく低下した患者においては、血中のアンモニア濃度が上昇して脳内に移行し肝性脳症を引き起こす可能性がある。そのため、肝機能が著しく低下した患者へのアミノ酸補給には、バリン、ロイシン、イソロイシンなどの肝臓ではなく筋肉や脳などで代謝される分岐鎖アミノ酸を多く添加する必要がある。
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