薬剤師国家試験 平成28年度 第101回 - 一般 実践問題 - 問 234,235
34歳女性。検診で乳がんの疑いを指摘された。血縁者の多くが乳がんを発症していたため、乳がんの遺伝子検査及び組織診断を受けた。その結果、HER2陽性乳がんと診断された。骨転移があるため、ドセタキセル/カルボプラチン/トラスツズマブの併用療法のレジメンに従い、薬物治療が始まった。
問234(衛生)
遺伝性乳がんの発症に関わる遺伝子はどれか。1つ選べ。
1 APC
2 BRCA1
3 NF1
4 p53
5 RB
6 VHL
問235(実務)
ドセタキセル/カルボプラチン/トラスツズマブの併用療法について、誤っているのはどれか。1つ選べ。
1 トラスツズマブ投与前及び投与期間中に適宜心機能検査をする。
2 トラスツズマブはアナフィラキシー様症状に注意して投与する。
3 トラスツズマブの代表的な副作用に骨髄抑制がある。
4 カルボプラチンの投与期間中は血清電解質濃度及び腎機能検査を行う。
5 カルボプラチンはアナフィラキシー様症状に注意して投与する。
6 カルボプラチンの代表的な副作用に骨髄抑制がある。
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問234 解答 2
1 誤
APC(Adenoma polyposis coli)は大腸がん(家族性大腸ポリポーシス症)や胃がん、膵がんなどに関与するがん抑制遺伝子である。
2 正
BRCA1(Brest cancer susceptibility gene Ⅰ)は、遺伝性乳がんに関わるがん抑制遺伝子である。
3 誤
NF1(Neurofibromatosis type Ⅰ)は、神経線維腫症1型に関わるがん抑制遺伝子である。
4 誤
p53は、細胞内でDNA修復や細胞増殖停止、アポトーシスなどの細胞増殖サイクルの抑制を制御する機能を持つがん抑制遺伝子である。
5 誤
RB(Retinoblastoma gene)は、網膜芽細胞腫や非遺伝性の骨肉腫や肺がんなどの抑制に関わるがん抑制遺伝子である。
6 誤
VHL(Von Hippel-Lindau)は、常染色体優性遺伝性疾患であるフォン・ヒッペル・リンドウ病に関わるがん抑制遺伝子である。
問235 解答 3
1 正しい
トラスツズマブの投与によって心不全等の重篤な心障害があらわれ、死亡に至った例も報告されているため、トラスツズマブ投与開始前には必ず、患者の心機能を確認する必要がある。また、トラスツズマブ中は適宜心機能検査(心エコー等)を行い、患者の状態を十分に観察する必要がある。
2 正しい
トラスツズマブ投与中又は投与開始後24時間以内に多くあらわれるInfusion reactionのうち、アナフィラキシー様症状、肺障害等の重篤な副作用(気管支けいれん、重度の血圧低下、急性呼吸促迫症候群等)が発現し死亡に至った例が報告されている。よって、患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与する必要がある。
3 誤っている
トラスツズマブの代表的な副作用として、心障害やアナフィラキシー様症状、間質性肺炎などがある。
4 正しい
カルボプラチン投与によって腫瘍崩壊症候群があらわれることがあるため、血清中電解質濃度及び腎機能検査を行うなど、患者の状態を十分に観察する必要がある。腫瘍崩壊症候群は、悪性腫瘍の治療時、腫瘍が急速に死滅(崩壊)するときに生じ、体内の尿酸が増えたり、カリウムやカルシウムなどの電解質のバランスが崩れることによって、乳酸アシドーシスや急性腎不全を含む多様な病態を生じる。
5 正しい
カルボプラチンの投与によって、アナフィラキシー様症状を起こす恐れがある。よって、カルボプラチン投与時には、患者の観察を十分に行い、チアノーゼ、呼吸困難、胸内苦悶、血圧低下、気管支けいれん等が現れた場合には投与を中止し、適切な処置を行う必要がある。
6 正しい
カルボプラチン投与による副作用として、汎血球減少等の骨髄抑制がある。よって、カルボプラチン投与時には、末梢血液の観察を十分に行い、異常が認められた場合には、減量、休薬、中止等適切な処置を行う必要がある。
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