薬剤師国家試験 平成28年度 第101回 - 一般 実践問題 - 問 278,279
78歳女性。アルツハイマー型認知症と診断され、処方薬見直しのため入院していた。退院の際、仙骨部に発赤が見つかった。医師から家族に対し褥瘡のリスクについて説明があり、下記の薬剤が処方された。
問278(実務)
薬剤師が、患者の家族に対し、処方された薬剤ならびに介護上の注意点について説明した。説明内容として適切でないのはどれか。1つ選べ。
1 栄養状態が良くないと褥瘡は治りにくいので、十分な栄養をとらせてください。
2 体圧分散寝具は、褥瘡の予防及び治療に有効です。
3 本剤には、創面保護効果があります。
4 本剤には、抗炎症作用があります。
5 本剤は、褥瘡からの滲出液が多いときにも使用できます。
問279(薬剤)
本剤に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 本剤3 g中にジメチルイソプロピルアズレンが10 mg配合されている。
2 白色ワセリンは、水溶性基剤である。
3 精製ラノリンは、吸水能を有する。
4 2種の軟膏基剤のうち、白色ワセリンの方が強い乳化作用を示す。
5 主薬が水にほとんど溶けないことが、本軟膏基剤が選択されている理由の1つである。
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問278 解答 5
褥瘡とは長時間の皮膚の圧迫により栄養状態が悪くなり、皮膚や深部組織の傷害、炎症が起こることをいう。本設問の患者は「退院の際、仙骨部に発赤が見つかった」とあることから初期の褥瘡であると考えられる。
1 適切
褥瘡と栄養状態は密接な関係にあり、低栄養状態が続くと褥瘡は治りにくくなる。そのため、十分な栄養をとらせることを指導するのは適切である。
2 適切
体圧分散寝具は、体にかかる圧力を分散し、褥瘡の発生や進行の直接的な原因である長期間の皮膚の圧迫を防ぐことができる。そのため、体圧分散寝具は、褥瘡の予防及び治療に有効であると指導するのは適切である。
3 適切
ジメチルイソプロピルアズレン軟膏0.033%には軟膏基剤として白色ワセリン、精製ラノリンといった油脂性の基剤が用いられている。油脂性の基剤は、一般的に刺激が少なく、皮膚軟化作用、創面保護効果を有しており、乾燥皮膚や湿潤皮膚に用いることができる基剤となっている。そのため、本剤には創面保護効果がありますと指導するのは適切である。
4 適切
ジメチルイソプロピルアズレンは、抗炎症作用を持っており、褥瘡の炎症を抑える目的で処方されていると考えられる。そのため、本剤には抗炎症作用がありますと指導するのは適切である。
5 不適切
ジメチルイソプロピルアズレン軟膏0.033%の軟膏基剤には、油脂性基剤が用いられている。油脂性基剤は、急性期の褥瘡に対して用いられるが、吸水能が低いため褥瘡からの滲出液が多いときに使用することは望ましくない。そのため、本剤には褥瘡からの滲出液が多いときにも使用できますと指導するのは適切ではない。なお、浸出液が多い場合は、カデキソマーやマクロゴールなどの水溶性基剤を用いている軟膏剤が適している。
問279 解答 3、5
1 誤
ジメチルイソプロピルアズレン軟膏0.033%より、100 g中には0.033 gのジメチルイソプロピルアズレンが含まれている。そのため、本剤3 g中にジメチルイソプロピルアズレンが約1 mg配合されている。
2 誤
本剤に使用されている白色ワセリンは、脂溶性基剤の一種である。
3 正
精製ラノリンは、ヒツジの毛から得た脂肪様物質を精製したものであり、水相を欠く油中水型の乳剤性基剤に分類される。精製ラノリンは、主成分がコレステロールであり、水には溶けないが、多量の水を混和しても軟膏様の状態を保つほどの吸水能を有する。
4 誤
白色ワセリンは、石油から得られた炭化水素類の混合物を脱色して精製したものである。一方、精製ラノリンは、ヒツジの毛から得た脂肪様物質を精製したもので、乳化作用をもつコレステロールが主成分である。このことから、2種の軟膏基剤のうち、精製ラノリンの方が強い乳化作用を示す。
5 正
本剤の主薬であるジメチルイソプロピルアズレンは、ほとんど水に溶けないことが知られている。そのため、油脂性基剤である白色ワセリンや乳剤性基剤の精製ラノリンが選択されている。
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