薬剤師国家試験 平成28年度 第101回 - 一般 実践問題 - 問 286,287
40歳男性。活動期のクローン病と診断された。主治医より患者の栄養状態把握及び改善のため、院内栄養サポートチームに介入の依頼があった。
問286(実務)
この患者に対する栄養療法に関して、薬剤師が院内栄養サポートチームでとるべき対応について、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 消化及び吸収障害が重篤な場合は、半消化態栄養剤を第一選択として提案する。
2 成分栄養剤を用いる場合は、脂溶性ビタミンや不足する微量元素の投与を提案する。
3 重度な下痢症状が認められたり、広範な小腸病変が認められる場合は、TPN(Total Parenteral Nutrition)の実施を提案する。
4 栄養療法と薬物療法の併用は推奨されないことを提案する。
5 経腸栄養療法と併用する食事としては高脂肪食を提案する。
問287(病態・薬物治療)
クローン病に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 緩解と増悪を繰り返す。
2 小腸及び大腸に病変が限局する。
3 薬物治療により根治できる。
4 好発年齢は10歳代後半から20歳代である。
5 ほとんどの症例に粘血便が見られる。
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問286 解答 2、3
1 誤
半消化態栄養剤※1は経腸栄養剤の一種であり、ある程度の消化機能が保たれている場合でないと用いられない。そのため、栄養療法は、成分栄養剤※2を第一選択として提案する。なお、消化及び吸収障害が重篤な場合は、半消化態栄養剤を第一選択として提案することは不適切である。
半消化態栄養剤※1
窒素源はタンパク質の形で配合されており、吸収するためには消化の過程を経る必要がある栄養剤
成分栄養剤※2
窒素源はアミノ酸の形で配合されており、消化の過程を経ることなく、吸収が可能な栄養剤
2 正
成分栄養剤は、脂溶性ビタミンや必須微量元素の含有量が非常に少なく、本剤のみでは体内で不足が生じる可能性がある。そのため、成分栄養剤により栄養管理を行う場合には、脂溶性ビタミンや不足する微量元素の投与を提案するのが望ましい。
3 正
重度な下痢症状、広範な小腸病変、または腸管狭窄や大量出血などが認められる場合には、消化管への負担を避けるために、中心静脈栄養法(TPN)の実施を提案する。
4 誤
クローン病の治療では、消化管における炎症を抑えながら適切な栄養管理を行うことが重要であるため、栄養療法と薬物療法の併用が、推奨される。
5 誤
クローン病では、消化管の吸収能が低下しており、脂肪食の消化吸収に必要な胆汁酸の吸収・分泌が行うことができないため、高脂肪食を摂取すると、吸収されなかった脂肪が腸管を刺激して下痢や腹痛を引き起こすことがある。クローン病に対しては、経腸栄養療法と併用する食事としては低脂肪食を提案する。
問287 解答 1、4
1 正
クローン病は、原因不明の非特異的な炎症性腸疾患(IBD)であり、緩解と増悪を繰り返す。また、原因不明であるため根治療法は見つかっておらず、消化管炎症を抑えながら適切な栄養管理を行い、患者のQOLを維持することが治療の目的となる。
2 誤
クローン病では、消化管のすべての部位(口腔〜肛門)に非連続的な縦走潰瘍が認められ、腹痛や下痢(血便はほとんど見られない)、発熱、体重減少などの症状が見られる。
3 誤
解説1参照
4 正
クローン病の好発年齢は、10歳代後半から20歳代の若年層である。
5 誤
解説2参照
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解説動画1 ( 09:56 )
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