薬剤師国家試験 平成29年度 第102回 - 一般 理論問題 - 問 119
移植片拒絶反応について調べるため、2種類の近交系のマウス(A/A とB/B )を用いて、下記のような交配を行った。これらのマウスを用いて皮膚の移植実験を行った。以下に実験結果を示す。なお、A/A 、A/B 及びB/B は組織適合抗原の遺伝子型を表している。 [交配手順] ① A/A の親マウスとB/B の親マウス間で交配し、雑種第一代(F1 )マウスを得た。 ② F1 マウス同士を交配して雑種第二代(F2 )マウスを得た。 [実験結果] ① A/A の親マウス同士の移植、B/B の親マウス同士の移植は常に成立した。 ② A/A の親マウスとB/Bの親マウスの間の移植は常に失敗した。 以上の移植実験結果に基づき、移植が常に成立すると予想されるのはどれか。2つ 選べ。1 A/A の親マウスから、F1 マウスへの移植 2 F1 マウスから、A/A の親マウスへの移植 3 A/A の親マウスから、F2 マウスへの移植 4 F1 マウスから、B/B の親マウスへの移植 5 F2 マウスから、F1 マウスへの移植
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解答 1、5 本実験に用いた近交系のマウスとは、近親交配を20世代以上継続することで遺伝子構成を揃えたマウスである。近交系のマウスでは、近親交配を繰り返すことで遺伝子の均一性が増しており、個体内の対立遺伝子の100%近くが相同(ホモ接合体)である。また、個体間でも遺伝子組成の100%近くが同じである。 本実験の「マウスを用いた皮膚の移植実験」の実験結果①において、「A/A の親マウス同士の移植、B/B の親マウス同士の移植は常に成立した。」とあることから、主要組織適合抗原の遺伝子(MHC)が同一の近交系では、異なる個体であっても免疫寛容となり移植片拒絶反応が起こることなく、移植が常に成立すると考えられる。 また、実験結果②において「A/A の親マウスとB/B の親マウスの間の移植は常に失敗した。」とあることから、A/A とB/B は互いを非自己として認識し、移植片拒絶反応が起き、移植は常に失敗すると考えられる。 1 正 雑種第一代(F1 )のマウスはMHCとしてAとBの両方を有している(A/B )ため、A/A の親マウスだけでなくB/B の親マウスからの移植の場合も常に成立すると考えられる。 2 誤A/A の親マウスは、Bを発現する細胞を非自己として認識する。よって、Bを有するF1 マウスからA/A の親マウスへの移植は失敗すると考えられる。 3 誤 雑種第二代(F2 )のマウスは、A/A 、A/B 、B/B のいずれかを有しており、B/B のF2 マウスはAを発現する細胞を非自己として認識する。よって、A/A の親マウスからB/B のF2 マウスへの移植は失敗すると考えられる。 4 誤B/B の親マウスは、Aを発現する細胞を非自己として認識する。そのため、Aを有するF1 マウスからB/B の親マウスへの移植は失敗すると考えられる。 5 正 F1 のマウスは、AとBの両方を有しているため、A/A 、A/B 、B/B のいずれからの移植片も受け入れることができる。よって、F2 のマウスから、F1 のマウスへの移植は常に成立すると考えられる。
解説動画1 ( 07:53 )
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