薬剤師国家試験 平成29年度 第102回 - 一般 実践問題 - 問 208,209
22歳女性。体重45 kg。アセトアミノフェンを含有するOTC医薬品を大量に服用し、救急搬送されてきた。服用後約4時間が経過しており、アセトアミノフェンの摂取量から、解毒薬としてアセチルシステイン内用液17.6%の投与が必要と判断された。
問208(実務)
投与する用量として、添付文書には「本剤又は本剤を希釈した液を、初回にアセチルシステインとして140 mg/kg、次いでその4時間後から70 mg/kgを4時間毎に17回、計18回経口投与する。」と記載されている。投与されるアセチルシステイン内用液17.6%の総量(mL)として最も近いのはどれか。1つ選べ。
1 34
2 170
3 340
4 1,700
5 3,400
問209(物理・化学・生物)
アセトアミノフェンが大量投与された際に生じる代謝物Aは、グルタチオンとの間で付加体を生じる。この付加体の構造式として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
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問208 解答 3
本患者は、初回にアセチルシステインとして140 mg/kg投与することから、体重45 kgでのアセチルシステインの初回量は140 mg/kg×45 kg=6300 mgとなる。また、ついで4時間ごとに70 mg/kg/回を17回投与することから、17回分のアセチルシステインの量は70 mg/kg/回×45 kg×17回=53550 mgとなる。
よって、計18回分のアセチルシステイン量は、6300 mg+53550 mg=59850 mgとなり、投与されるアセチルシステイン内用液17.6%(17.6 g/100 mL=176 mg/mL)の総量をA mLとすると、総量は以下のように計算される。
176 mg/mL×A mL=59850 mg
A≒340 mL
よって投与されるアセチルシステイン内用液17.6%の総量として最も近いのは、340 mL(選択肢3)である。
問209 解答 4
アセトアミノフェンは、経口投与後速やかに消化管から吸収され、その大部分がグルクロン酸抱合体(49〜54%)及び硫酸抱合体(28〜33%)として尿中に排泄され、2〜3%は代謝されず、アセトアミノフェンとして尿中に排泄される。また、アセトアミノフェンの約15%はシトクロムP450による代謝を受けて、肝障害の原因となる代謝物A(N−アセチル−p−ベンゾキノンイミン(NAPQI))となる。NAPQIは、グルタチオンとの共役付加反応により、グルタチオン抱合を受けた後、最終的に、メルカプツール酸として尿中に排泄される。なお、グルタチオン抱合では、基質の求電子部位に対して、グルタチオン中システイン残基のチオール基の硫黄原子に存在する非共有電子対が求核的に反応し、グルタチオン抱合体を生成する。
以下にアセトアミノフェンの代謝機構を示す。
本設問のようにアセトアミノフェンが大量投与された場合、グルタチオンが枯渇することにより肝臓に蓄積したNAPQIが肝細胞構成タンパク質と共有結合を形成し、肝障害を引きおこす。なお、アセトアミノフェン中毒の解毒には、N−アセチルシステインが用いられる。N−アセチルシステインは、グルタチオンの前駆体として働き、NAPQIの解毒に必要なグルタチオンを補給し、グルタチオン抱合を促進する。
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