薬剤師国家試験 平成29年度 第102回 - 一般 実践問題 - 問 230,231
医薬品の適正使用のため、承認前には治験、承認後にもPMS(製造販売後調査Post Marketing Surveillance)が行われている。
問230(実務)
病院での治験に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 治験審査委員会には、治験実施施設以外の医師や薬剤師は加わることができない。
2 治験施設支援機関(SMO)から派遣された治験コーディネーターの薬剤師は、治験実施施設において治験薬を調剤することができる。
3 治験が適正に実施されることを確認するために、治験依頼者は医療機関を訪問してモニタリングを行う。
4 医師主導の治験では、モニタリング及び監査は、治験責任医師自身が行う。
5 医療機関の長から指名された治験薬管理者は、治験依頼者の定めた手順書により、治験薬を保管・管理する。
問231(衛生)
ある医薬品について免疫能を低下させる可能性が懸念された。そこで、治験に加えて、PMSにおいても感染症などの副作用の発現頻度を調査し、下表の結果を得た。この調査に関する記述のうち、誤っているのはどれか。2つ選べ。
1 このPMSでは3,000例の調査をしたことにより、治験では見つけられなかったニューモシスチス肺炎の発症を見出すことができた。
2 治験とは異なり、PMSにおいてCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の発現率が高くなったのは、PMSの対象患者に喫煙者が多かったことが一因と推定される。
3 治験とは異なり、PMSにおいて結核の発現率が高くなったのは、PMSの対象患者に後期高齢者が多かったことが一因と推定される。
4 いずれの肺炎の発現頻度も、治験の段階よりPMSの段階の方が高くなることがわかった。
5 PMSは副作用の発現を調べることが目的であり、有効性に関する調査は行われない。
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問230 解答 3、5
1 誤
治験審査委員会は、次に掲げる要件を満たしていなければならない。設問のような記述は特に要件として定められていない。
①治験について倫理的及び科学的観点から十分に審議を行うことができること。
②5名以上の委員からなること。
③委員のうち、医学、歯学、薬学その他の医療又は臨床試験に関する専門的知識を有する者以外の者が加えられていること。
④委員のうち、実施医療機関と利害関係を有しない者が加えられていること。
⑤委員のうち、治験審査委員会の設置者と利害関係を有しない者が加えられていること。
2 誤
治験実施施設における調剤業務は、その実施施設に勤務する薬剤師が行う。治験施設支援機関(SMO)の業務において、「薬剤師の行う調剤に係る業務については委託又は労働派遣により業務を行うことはできない」とされており、SMOから派遣された治験コーディネーターの薬剤師が調剤することはできない。
3 正
治験依頼者は、治験が適正に行われていることを確認するために、医療機関を訪問してモニタリングや監査を行う。
4 誤
医師主導の治験では、モニタリング及び監査は、治験責任医師が指名したその治験に関与する者以外の者によって行われる。治験責任医師自身がモニタリング及び監査を行うことはできない。
5 正
治験薬管理者は、治験依頼者の定めた手順書に基づき、治験薬を保管・管理する。
問231 解答 4、5
N数と例数より、副作用発現率を算出すると以下の表の通りになる。
1 正しい
表より、治験(N=300)では見られなかったニューモシスチス肺炎の発症を、PMS(N=3,000)では3例見出すことができた。
2 正しい
通常治験は、喫煙などの交絡因子の影響を排除するために、非喫煙者を対象に実施されている。また、COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、喫煙により発症率が高くなる。そのため、PMSで発現率が高くなったのは、PMSの対象患者に喫煙者が多かったことが一因と推定される。
3 正しい
通常治験は、若年者を対象として実施されている。また、高齢者は加齢や基礎疾患の影響で結核の発症率が高くなる。そのため、PMSで結核の発症率が高くなったのは、PMSの対象患者に後期高齢者が多かったことが一因と推定される。
4 誤っている
表より、ニューモシスチス肺炎の発症率はPMSの段階の方が高くなっているが、細菌性肺炎の発症率は同じである。
5 誤っている
PMSでは、医薬品の副作用の発現率だけでなく、有効性に関する調査も行われる。
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