薬剤師国家試験 平成29年度 第102回 - 一般 実践問題 - 問 254,255
68歳女性。脳梗塞で1ヶ月間入院した後退院し、以下の処方せんを持って薬局を訪れた。
問254(薬理)
いずれの処方薬の薬理作用にも該当しないのはどれか。1つ選べ。
1 フリーラジカルを消去し、酸化的ストレスによる神経細胞の障害を抑制する。
2 キニナーゼⅡを阻害し、ブラジキニンの分解を抑制する。
3 H+,K+−ATPaseを阻害し、酸分泌を抑制する。
4 PPARα(ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α)を刺激し、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)を増加させる。
5 活性代謝物が血小板ADP受容体を遮断し、血小板凝集を抑制する。
問255(実務)
クロピドグレル錠の使用に関する注意事項として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 肝障害や黄痘を起こすことがあるので、観察を十分に行う必要がある。
2 重篤かつ遷延性の低血糖症を起こすことがある。
3 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)が発現する危険があるので、投与開始後2ヶ月間は2週間に1回程度の血液検査を行う。
4 グレープフルーツジュースは本剤の作用を増強するので避ける。
5 出血のリスクが高まるので、OTC医薬品の解熱鎮痛剤を自己判断で服用しない。
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問254 解答 1
1 該当しない
設問の記述が該当する薬剤としては、エダラボンがある。エダラボンは、脳虚血時に発生するフリーラジカルを消去する作用を有し、酸化的ストレスによる神経細胞の障害を抑制する。
2 該当する
エナラプリルマレイン酸塩錠の薬理作用である。エナラプリルは、アンギオテンシ変換酵素(ACE)阻害薬であり、アンギオテンシンⅡの生合成を抑制することで、アンギオテンシンⅡによる昇圧作用を抑制する。また、ACEと同一酵素であるキニナーゼⅡを阻害することで、ブラジキニンの分解を抑制し、ブラジキニンによる降圧作用を増強する。
3 該当する
ラベプラゾールNa錠の薬理作用である。ラベプラゾールは、プロトンポンプ阻害薬(PPI)であり、酸性条件下で活性体となり、胃酸分泌に関与するプロトンポンプ分子のSH基と共有結合することで不可逆的に阻害し、胃酸分泌を抑制する。
4 該当する
フェノフィブラート錠の薬理作用である。フェノフィブラートは、核内受容体であるPPARα(ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α)を刺激し、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)の主要構成タンパク質であるアポリポタンパク質A−1やHDL形成に必要なABCA1の生合成を促進して、血清HDLを増加させる。
5 該当する
クロピドグレル錠の薬理作用である。クロピドグレルは、肝臓で活性代謝物に変換され、血小板膜に存在するADP受容体であるP2Y12受容体を遮断することで、血小板凝集を抑制する。
問255 解答 1、5
1 正
本剤は、肝障害や黄疸を起こすことがあるため、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し、必要に応じて適切な処置を行う必要がある。
2 誤
本剤は、血糖上昇を起こすことがある。
3 誤
本剤は、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、無顆粒球症、重篤な肝障害等の重大な副作用を起こすことがあるため、投与開始後2ヶ月間は、2週間に1回程度の血液検査等の実施を考慮する必要がある。なお、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を起こすという報告はない。
4 誤
本剤は、主にCYP2C19により活性代謝物に変換され、CYP3A4による寄与は大きくない。グレープフルーツジュースは、CYP3A4阻害作用をもつが、本剤の作用を増強するなどの相互作用については特に報告されていない。
5 正
OTC医薬品の解熱鎮痛剤の中には、アスピリンなどの血小板凝集抑制作用を有する成分がある。そのため、併用により出血のリスクが高まるので、自己判断で服用しないよう指導する必要がある。
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