薬剤師国家試験 平成29年度 第102回 - 一般 実践問題 - 問 280,281
68歳男性。慢性閉塞性動脈硬化症における安静時疼痛に対し、アルプロスタジル注射液10 µg(リピッドマイクロスフェア製剤)を輸液と混合し、持続投与することになった。病棟の看護師から、本剤の使用上の注意事項について薬剤師に問い合わせがあった。
問280(薬剤)
本剤の特徴に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 リン脂質の二重膜構造からなる閉鎖小胞で、脂溶性のアルプロスタジルはリン脂質二重膜の疎水部に封入されている。
2 植物性油をレシチンで乳化したo/w型エマルションであり、脂溶性のアルプロスタジルは油滴内に封入されている。
3 血中滞留性の向上を目的として、粒子表面がポリエチレングリコールで修飾されている。
4 能動的に炎症部位へ薬物を送達させるために、粒子表面が炎症細胞を認識する抗体で修飾されている。
5 受動的ターゲティングにより、炎症部位へ薬物が送達される。
問281(実務)
本剤を使用するにあたり、薬剤師が看護師に行うべき情報提供として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 すぐに使用しない場合は、凍結させて保存する。
2 ライン内での凝集を防ぐため、必ず単独ラインで投与する。
3 凝集を防ぐため、電解質を含む輸液で希釈しない。
4 輸液フィルターを使用して投与する。
5 ポリ塩化ビニル製の輸液セットの使用を避けることが望ましい。
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問280 解答 2、5
アルプロスタジル注射液(リピッドマイクロスフェア製剤)は、植物油(大豆油)を卵黄レシチンで乳化した、内相が油、外相が水のo/w型エマルションであり、油相内に脂溶性薬物であるアルプロスタジルを封入した製剤である。リピッドマイクロスフェア製剤は、マクロファージに貪食されやすい特徴を持ち、マクロファージが多い炎症部位や血管病変部位に集積しやすい性質があるため、炎症部位や血管病変部位へ薬物を送達させる担体として利用される。
1 誤
リン脂質の二重膜構造からなる閉鎖小胞体のことをリポソームといい、リポソームを使った製剤例としては、抗真菌薬アムホテリシンBを封入したリポソーム製剤などが知られている。
2 正
前記参照
3 誤
ポリエチレングリコール(PEG)で修飾されたリポソーム製剤の記述である。ポリエチレングリコールで修飾されたリポソームは、水溶性が高まったことで抗原性が低下し、細網内皮系組織への取り込みを回避することができるため、血中における滞留性が増大する。
4 誤
能動的ターゲティングの記述である。能動的ターゲティングは標的部位を特異的に認識できる抗体や糖タンパク質などを薬物に結合させることにより、目的の部位へ薬物を送達させる方法である。
5 正
アルプロスタジル注射液(リピッドマイクロスフェア製剤)は、受動的ターゲティングを利用した製剤である。受動的ターゲティングとは、生体の生理学的・解剖学的性質あるいは正常細胞と病変細胞の違いを利用することにより、目的の場所へ薬物を送達させる方法である。
問281 解答 2、5
1 誤
本剤は、凍結を避け5℃以下で遮光して保存するように伝える。
2 正
本剤は、植物油などを含む製剤であるため、他の薬物と混合した場合、脂肪粒子が凝集することが確認されている。そのため、原則として末梢静脈から単独ラインで投与する。
3 誤
本剤は、電解質を含む輸液で希釈しても凝集等は認められないため、電解質を含む輸液で希釈してもよい旨を説明する。
4 誤
本剤は脂肪乳剤であり、フィルターが詰まるおそれがあるため、投与する際はフィルターを使用しないように説明する。
5 正
本剤に含まれる大豆油や卵黄レシチンにより、ポリ塩化ビニル性の輸液セットに可塑剤として含まれるフタル酸ジ−(2−エチルヘキシル)が製剤中に溶出することが報告されている。そのため本剤を使用する際は、ポリ塩化ビニル性の輸液セットの使用を避けることが望ましい。
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