薬剤師国家試験 平成29年度 第102回 - 一般 実践問題 - 問 284,285
65歳男性。2型糖尿病。インスリン導入目的で入院となった。入院後は、看護師が1日3回インスリンを注射し、血糖コントロールは良好となった。退院に向け、以下のインスリンカートリッジ製剤が処方され、自己注射の指導に薬剤師が加わることになった。
問284(実務)
薬剤師が患者に伝えるべき内容として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 上腕部、大腿部、腹部、臀部等に皮下注射する。
2 使用開始後は、冷蔵庫に保管する。
3 食事を摂らなかった場合は注射しない。
4 この製剤は、入院中に使用していたインスリンよりも夜間に低血糖となるリスクが低い。
問285(薬剤)
今回処方されたインスリンカートリッジ製剤に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、本製剤中には、酢酸亜鉛、フェノール、濃グリセリン、塩酸、水酸化ナトリウムなどが添加されている。
1 酢酸亜鉛は、インスリンの安定性を向上させる目的で添加されている。
2 フェノールは、pHを調節するために添加されている。
3 質量偏差試験により有効成分の均一性が保証されている。
4 カートリッジ製剤は、薬液調製時若しくは投与時の細菌感染や異物混入の防止を目的としている。
5 本製剤中のインスリンは安定性が高いため、承認申請時の長期保存試験が免除されている。
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問284 解答 1、4
1 正
本剤の皮下注射は、腹部、大腿部、上腕部、臀部などに行う。また、投与部位によって吸収速度が異なるため投与部位を決め、注射によるしこりなど出来ないように、投与部位の中で注射する場所を毎回変えて注射することも併せて伝える。
2 誤
本剤は、未使用の場合は凍結を避け2〜8℃で遮光して保存するが、使用開始後は冷蔵庫に保管せず室温で保管し、6週間以内に使用する。
3 誤
本剤は持効型インスリンであるため、食事時間に関係なく注射できる特徴をもつ。そのため、食事を摂らなかった場合でも注射を行うよう伝えることが望ましい。
4 正
患者が入院中に使用していたインスリンは、1日3回注射を行っていたことから、速効型または超速効型インスリンと考えられる。今回処方されているレベミル注ペンフィルは、1日1回投与の持効型インスリンであり、徐々に標的組織に分布されることで、24時間にわたりインスリン濃度を一定に保ち、急激な血糖降下を起こしにくい。そのため、速効型インスリンに比べ、夜間に低血糖となるリスクは低くなる。
問285 解答 1、4
1 正
酢酸亜鉛は、インスリンの安定性を向上させる安定化剤として添加されている。
2 誤
フェノールは、防腐目的で添加されている。なお、pHを調節するために添加されているのは、塩酸及び水酸化ナトリウムである。
3 誤
質量偏差試験は製剤均一性試験法の一つであり、有効成分の均一性の程度を確認する試験法である。注射剤のうち、質量偏差試験が適応となるのは、用時溶解または用時懸濁して用いるものであるので、用時溶解または用時懸濁をしない本剤には適応されない。
4 正
カートリッジ製剤は、薬液調製時若しくは投与時の細菌感染や異物混入の防止を目的に開発された製剤である。
5 誤
長期保存試験は、安定性試験法の1つで、原薬又は製品の品質がその有効期間にわたって維持されることを実証するために行われる試験法である。インスリンは安定性が低い薬剤であるため、長期保存試験が免除されることはない。
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