薬剤師国家試験 平成29年度 第102回 - 一般 実践問題 - 問 294,295
29歳女性。1型糖尿病のため、インスリンを自己注射により使用していた。発熱を契機に3日前から全身倦怠感、下痢、嘔吐が始まり、これらの症状に加えて意識障害が出現したため、家族に伴われて救急外来を受診した。
身体所見:身長160 cm、体重60 kg
検査データ:血糖値418 mg/dL、血圧110/60 mmHg、尿糖(+++)、尿中ケトン体(++)、Na 129 mEq/L、Cl 92 mEq/L、pH 7.1、HCO3− 8.9 mEq/L
問294(病態・薬物治療)
本患者及び本症例に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 Body mass index(BMI)が25以上の肥満である。
2 Glutamic acid decarboxylase(GAD)抗体は陽性である可能性が高い。
3 意識障害の原因は、乳酸アシドーシスである可能性が高い。
4 糖利用の低下により脂肪分解が亢進した状態にあると考えられる。
5 重症化した場合は、グリニド系薬剤の併用が推奨される。
問295(実務)
本患者に対する処置として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 プレドニゾロンの点滴静注
2 ブドウ糖の静脈内注射
3 生理食塩液の点滴静注
4 インスリンの点滴静注
5 アドレナリンの筋肉注射
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問294 解答 2、4
1 誤
Body mass index(BMI)は25以上を肥満とし、体重(kg)/身長(m)2で求められる。本患者のBMIは60 kg÷(1.6 m)2≒23であるため、肥満ではない。
2 正
1型糖尿病は、自己免疫異常による膵ランゲルハンス島細胞の破壊により発症することが多く、グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD:Glutamic acid decarboxylase)抗体などの膵ランゲルハンス島細胞に対する自己抗体が認められる。本患者は1型糖尿病であるため、GAD抗体が陽性である可能性が高い。
3 誤
1型糖尿病では、絶対的インスリン欠乏により筋組織などに糖が取り込めないため、糖利用が行えず、代償的に脂肪分解を亢進させてエネルギーを産生しようとするが、その際にケトン体が産生されアシドーシスを引き起こすことがある。これを糖尿病ケトアシドーシスといい、重篤な場合には意識障害や昏睡状態を引き起こす。本患者は尿中ケトン体(++)とあることからも、意識障害の原因はケトアシドーシスである可能性が高い。
4 正
解説3参照
5 誤
本患者のような糖尿病ケトアシドーシスが重症化している場合は、インスリン療法の絶対適応となる。なお、1型糖尿病患者ではインスリン分泌能がほぼ無くなっており、グリニド系薬剤のようなインスリン分泌促進薬の投与は無効であるため、投与禁忌とされている。
問295 解答 3、4
糖尿病ケトアシドーシスの際の初期治療は、インスリンの点滴静注と、生理食塩液による脱水症状の改善及び電解質の補正である。なお、本選択肢にあるプレドニゾロンの点滴静注、ブドウ糖の静脈内注射、アドレナリンの筋肉注射は、いずれも血糖値を上昇させ、糖尿病を悪化させるおそれがある。
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