薬剤師国家試験 平成29年度 第102回 - 一般 実践問題 - 問 296,297
45歳女性。10年前より双極性障害で加療中。処方1の維持療法で病状は安定していたが、ここ1ヶ月で症状が悪化したため、本日新たに処方2が追加された。
処方せんを受け取った薬局の薬剤師は、安全に薬物療法を実施できるよう、患者に対し注意すべき事項を伝えた。
問296(実務)
今回追加処方された薬剤の重大な副作用の初期症状の組合せとして、患者に伝えるべきことはどれか。1つ選べ。
1 皮膚の広い範囲が赤くなる、38℃以上の熱がでる、眼が充血する、唇や口の中がただれる、のどが痛む、体がだるい。
2 急に強い空腹感をおぼえる、冷や汗がでる、手足がふるえる、力の抜けた感じがする。
3 息切れがする、息苦しくなる、空咳がでる、発熱する。
4 筋肉が痛んだりこわばったりする、手足がしびれる、手足に力が入らない、尿の色が赤褐色になる。
5 眼の痛みを生じる、眼がかすむ、頭痛がする、吐き気がする。
問297(病態・薬物治療)
この患者の薬物療法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 ラモトリギンは、気分エピソードの中でも、特にうつ状態に対する効果が強い。
2 ラモトリギンが追加されたので、定期的なラモトリギンの血中濃度測定を行う必要がある。
3 炭酸リチウムの1日投与量が400 mgなので、定期的な血中濃度測定を行う必要はない。
4 炭酸リチウムの中毒が疑われる際の治療には、ループ利尿薬が適している。
5 ラモトリギンが使用できない場合は、オランザピンを推奨する。
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問296 解答 1
本問の処方薬のうち、新しく追加されたラモトリギンは、重大な副作用として中毒性表皮壊死融解症(TEN:toxic epidermal necrolysis)及び皮膚粘膜眼症候群(SJS:Steavens-Johnson syndrome)を引き起こすことがあるため、38℃以上の発熱、眼の充血、口唇のびらん、喉の痛み、全身倦怠感がみられた場合は直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に連絡するよう指導する必要がある。
問297 解答 1、5
双極性障害は、躁状態とうつ状態を繰り返す疾患であり、治療には炭酸リチウムやバルプロ酸ナトリウム、ラモトリギンなどの気分安定薬や、オランザピンやアリピプラゾールなどの抗精神病薬が用いられる。
1 正
ラモトリギンは、躁病エピソード、うつ病エピソードのどちらの気分エピソードに対しても効果はあるが、特にうつ病エピソードの再発予防に対する効果が強い。
2 誤
ラモトリギンは、特に定期的な血中濃度測定を行う必要はない。なお、血中濃度測定が必要な双極性障害治療薬としては、バルプロ酸ナトリウムなどがあげられる。
3 誤
炭酸リチウムは通常、維持量として一日200 mg〜800 mgを1〜3回分割経口投与する。また、本剤は治療有効濃度領域が0.8〜1.2 mEq/Lと狭く、中毒を起こしやすいため、2〜3ヶ月に1回をめどに血清リチウム濃度の測定結果に基づきトラフ値を評価しながら使用する。
そのため、本患者は1日投与量が400 mgで維持量内ではあるが、定期的な血中濃度測定を行う必要がある。
4 誤
炭酸リチウムとループ利尿薬の併用は、尿細管におけるリチウムイオンの再吸収を促進し、中毒を引き起こすことがあるため、炭酸リチウムの中毒が疑われる際の治療にループ利尿薬は用いられない。
5 正
双極性障害の薬物療法では炭酸リチウムなどの気分安定薬(ムードスタビライザー)や、オランザピンやアリピプラゾールなどの抗精神病薬(メジャートランキライザー)が用いられる。
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解説動画1 ( 14:53 )
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