薬剤師国家試験 平成29年度 第102回 - 一般 理論問題 - 問 99
核磁気共鳴スペクトル測定法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 核磁気共鳴スペクトルの測定には、一般にラジオ波領域の電磁波が用いられる。
2 19Fを利用して有機化合物中にあるフッ素の核磁気共鳴スペクトルを測定できる。
3 ベンゼンの水素は、π電子による遮蔽効果を受ける。
4 測定溶媒中に重水を添加することにより、アルケンに結合している水素のシグナルを消失または移動させることができる。
5 プロトン間のスピン−スピン結合定数は、外部磁場の強さの影響を受ける。
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解答 1、2
1 正
核磁気共鳴スペクトル測定法(NMR)は、外部磁場の中におかれた有機分子に、ラジオ波を照射することで、分子内の原子核が低エネルギー状態の核スピンから高エネルギー状態の核スピンに遷移する現象を利用して、化学物質の定性分析(構造解析、確認・同定)や定量分析を行う分光分析法である。
2 正
原子核を外部磁場におくと、低エネルギーと高エネルギーの準位に分裂する。この現象をゼーマン分裂といい、NMRによる測定はこのときのエネルギーの差が外部磁場の大きさと比例することを利用している。また、それぞれの核種のエネルギー準位は2I+1個に分裂し、I(スピン量子数)が0の原子の場合、エネルギー差は存在しないため、NMRにおいて測定することができない。19FはIが1/2となるため、核磁気共鳴スペクトルを測定できる。。なお、NMRにおいて測定できないI=0の原子は質量数、原子番号がともに偶数である12Cや16Oなどがある。
3 誤
ベンゼンは、外部磁場により不飽和結合のπ電子が環電流を生じて誘起磁場を発生させる。発生した誘起磁場は、ベンゼンであれば、図で表す芳香環の内側と上下に外部磁場と反対方向となる遮蔽領域を発生させ、環の外側では外部磁場と同方向となる反遮蔽領域を発生させる。この現象を磁気異方性効果といい、環の外側に結合しているプロトンは遮蔽が弱まり、反遮蔽効果を受ける。なお、ベンゼン以外にも、二重結合や三重結合を持つ化合物も同様に磁気異方性効果が生じる。
4 誤
O、N、Sに結合する水素は、重水(D2O)を添加することで重水素に置換されやすい。1H−NMRにおいて、重水素に置換されたシグナルは消失または移動するが、アルケンの水素は重水素による置換が起きないため重水を添加することにより、シグナルが消失または移動することはない。
5 誤
プロトン間のスピン−スピン結合定数(J値)は、シグナルの分裂の間隔を表し、外部磁場の影響を受けず、分子に固有の値をとる。
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