薬剤師国家試験 平成30年度 第103回 - 一般 理論問題 - 問 123
油脂の変敗に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 オレイン酸のみを含む油脂より、リノール酸のみを含む油脂の方が酸化されやすい。
2 同じ条件で酸化したとき、γ-リノレン酸のみを含む油脂より、α-リノレン酸のみを含む油脂の方が、カルボニル価は著しく速く上昇する。
3 不飽和脂肪酸を含む油脂のヨウ素価は、酸化により上昇する。
4 酸化により油脂中の脂質ヒドロペルオキシドが増加すると、過酸化物価の測定において、滴定に要するチオ硫酸ナトリウムの量は減少する。
5 食品添加物として添加したビタミンEは、不飽和脂肪酸を含む油脂の過酸化物価の上昇を抑制する。
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解答 1、5
油脂の変敗は、主に二重結合を多く含む多価不飽和脂肪酸(リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸など)の活性メチレン基(二重結合の間に挟まれた炭素)から熱、光、酸素などの作用により水素の引き抜きが起こることで進行する。
1 正
一般に、二重結合の数が多い脂肪酸ほど活性メチレン基も多くなるため変敗しやすい。オレイン酸(C18:1)には活性メチレン基が存在しないが、リノール酸(C18:2)は活性メチレン基が1つ存在する。よって、オレイン酸のみを含む油脂より、リノール酸のみを含む油脂の方が酸化されやすい。
2 誤
カルボニル価は、油脂中に含有されるケトンやアルデヒドなどのカルボニル化合物の量を示す指標であり、変敗が進行するにつれて値が増加する。一般に二重結合の数が多い脂肪酸ほど変敗しやすい(解説1参照)が、α-リノレン酸(C18:3)とγ-リノレン酸(C18:3)は活性メチレン基の数が同じであるため、変敗は同程度に進行する。ゆえに、α-リノレン酸(C18:3)のみを含む油脂とγ-リノレン酸(C18:3)のみを含む油脂のカルボニル価は、同程度に上昇する。
3 誤
ヨウ素価は、油脂中に含まれる二重結合の量を示す指標である。油脂の変敗が進行すると油脂中の二重結合が開裂するため、不飽和脂肪酸を含む油脂のヨウ素価は、酸化により下降する。
4 誤
過酸化物価は、油脂の変敗によって生じたヒドロペルオキシドなどの過酸化物の量を示す指標である。過酸化物価の試験では、試薬としてヨウ化カリウムとチオ硫酸ナトリウムを使用し、油脂の変敗によって生じた過酸化物によりヨウ化物イオンが酸化されて生成するI2をチオ硫酸ナトリウム標準液で滴定して過酸化物の量を測定する。酸化により油脂中のヒドロペルオキシドが増加すると、生成するI2の量も増加するため、滴定に要するチオ硫酸ナトリウムの量は増加する。
5 正
ビタミンE(dl-α-トコフェロール)は、ラジカル捕捉作用を有する酸化防止剤であり、不飽和脂肪酸を含む油脂に添加することで変敗を抑制するため、過酸化物価の上昇を抑制する。
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