薬剤師国家試験 平成30年度 第103回 - 一般 実践問題 - 問 196,197
68歳男性。慢性腎不全にて入院中。今回とこれまでの血液検査の結果から、eGFRの低下が認められたため、クレメジン®細粒分包2 g(注)が追加となり、薬剤師に服薬説明の依頼があった。
(注:1包中に球形吸着炭2 gを含有する)
問196(物理・化学・生物)
球形吸着炭は、その表面に種々の物質を吸着することができる。本薬物の吸着現象に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 本薬物への吸着に飽和現象が観察された場合、単分子層吸着が主であると判断できる。
2 本薬物への最大吸着量は、ノイエス−ホイットニー(Noyes−Whitney)の式から求めることができる。
3 本薬物への物質の吸着は、吸着速度と脱離速度が等しくなるまで進行する。
4 本薬物による物質の吸着は、主に静電的相互作用による。
問197(実務)
患者は本製剤を服用するのが初めてである。服薬説明として誤っているのはどれか。2つ選べ。
1 固体のまま消化管を通過するため、胃潰瘍や食道静脈瘤の治療を行っていないか確認する。
2 床に大量にこぼした場合には、転倒の原因となることがあるため、早めに濡れたタオルで拭き取るよう指導する。
3 他の薬剤と併用する際には、同時服用は避けるよう指導する。
4 墨汁で染めたような黒色の便となるため、患者が驚かないように説明する。
5 袋型オブラートや服薬補助ゼリーの使用により、効果が減弱することを説明する。
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問196 解答 1、3
薬物への物質の吸着様式には、物質が薬物に一層で吸着する単分子層吸着と、吸着した物質の上にさらに物質が重なる多分子層吸着が知られている。
単分子層(飽和)吸着量Vmを求めるには、単分子層吸着ではLangmuir式(ラングミュアー式)、多分子層吸着ではBET式を用いる。
1 正
本問では、「本薬物への吸着に飽和現象が観察された場合」とあるため、本薬物への物質の吸着は単分子層吸着であると予想される。
2 誤
本薬物への最大吸着量は、単分子層飽和吸着量であるため、Langmuir式(ラングミュアー式)が用いられる。また、Noyes−Whitney式(ノイエス−ホイットニー式)は、溶解過程が拡散律速の場合の溶解速度を表した式である。
3 正
本薬物への物質の吸着は、吸着平衡が成り立つまで進行する。吸着平衡では、吸着速度と脱離速度が等しくなる。
4 誤
球形吸着炭は、慢性腎不全における尿毒症毒素を消化管内で吸着し、糞便中に排泄させることにより、尿毒症症状を改善し、透析導入を遅らせることができるため、尿毒症症状の改善及び透析導入の遅延に用いられる。本薬物には小さな穴があいており、その穴に毒素がファンデルワールス力等により引きつけられることにより効果を発揮する。
問197 解答 4、5
1 正しい
球形吸着炭は固体のまま消化管を通過し、慢性腎不全における尿毒症毒素を消化管内で吸着し、糞便中に排泄させるため、胃潰瘍や食道静脈瘤を刺激するおそれがある。そのため、これらの疾患を有する患者には慎重投与とされている。
2 正しい
本薬物を床に大量にこぼしたまま放置した場合、滑って転倒の原因となることがあるため、早めに濡れたタオルで拭き取るか掃除機で吸い取るなどの指導が必要である。
3 正しい
本薬物を他の薬剤と併用すると、本薬物が吸着することにより併用された薬剤の薬効に影響を与えるおそれがある。そのため、他の薬剤と併用する場合には、本薬物と併用薬は同時に服用せず、30分から1時間の間隔をあけることが望ましい。
4 誤っている
本薬物は黒色であるが、墨汁で染めたような黒色の便となるとの報告はない。なお、服用により黒色の便となるのは、鉄剤であり、鉄剤服用時は患者に便の色が変化しても驚かないように説明する必要がある。
5 誤っている
本薬物において袋型オブラートや服薬補助ゼリーの使用により、効果が減弱するとの報告はない。本薬物は1回服用量が多く、口の中に細粒が吸着することがあるため比較的飲みにくく、コンプライアンスの向上を目的として、袋型オブラートや服薬補助ゼリーをすすめることも多い。
なお、袋型オブラートや服薬補助ゼリーの使用により、効果が減弱する薬物には、センブリなどの苦味健胃薬などがある。
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解説動画1 ( 08:46 )
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