薬剤師国家試験 平成30年度 第103回 - 一般 実践問題 - 問 226,227,228,229
74歳女性。年齢を考えるとそろそろ骨がもろくなり、寝たきりになるのではないかと心配になった。
問226(実務)
この女性が薬局を訪れ、サプリメントの摂取について相談した。薬局に取りそろえている以下の成分を含むサプリメントのうち、カルシウム(Ca)のほかに摂取する成分として優先度が高いのはどれか。2つ選べ。
1 ビタミンA
2 ビタミンC
3 ビタミンD
4 ビタミンE
5 ビタミンK
問227(物理・化学・生物)
この女性に「骨粗しょう症は加齢とともに骨がもろくなり、進行しやすい病気なので、無理のない軽い運動を心がけてください」と指導した。この指導の根拠となる骨のリモデリングに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 エストロゲンは、骨からのCa2+遊離を促進する。
2 骨細胞は、増殖能を有する未分化細胞であり、Ca2+を細胞外へ分泌する。
3 骨芽細胞は、コラーゲンを細胞外へ分泌して骨基質をつくる。
4 カルシトニンは、破骨細胞の機能を抑制して、骨形成に働く。
5 負荷がかかる運動は、破骨細胞を活性化することで骨量を増加させる。
問228(実務)
3ヶ月後、この女性が全身倦怠感を覚え、近医を受診したところ、血清Ca濃度10.0 mg/dL、血清アルブミン濃度3.0 g/dLであった。なお、補正血清Ca濃度は、血清Ca濃度と血清アルブミン濃度から次の式で算出される。以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
補正血清Ca濃度(mg/dL)=血清Ca濃度+[4-(血清アルブミン濃度)]
補正血清Ca濃度の基準値:8.4〜10.2 mg/dL
1 血清中のCa濃度を評価する際、この女性は高アルブミン血症であるため、補正血清Ca濃度を用いる。
2 この女性は低Ca血症と判断される。
3 イオン化したCaのみを測定しないと、この女性におけるCaの過不足は判断できない。
4 この女性は、脱力や脱水、腎障害を起こしやすいと予測される。
5 ビタミンを含む薬剤の中には、過剰摂取すると高Ca血症を引き起こすものがある。
問229(衛生)
骨の構成成分であるCaに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 Caは、主に遊離イオン状態で骨や歯に存在する。
2 骨に存在するオステオカルシンは、Caと結合する。
3 腸管からのCaの吸収は、カゼインホスホペプチドにより阻害される。
4 腸管からのCaの吸収は、シュウ酸やフィチン酸により亢進する。
5 パラトルモン(副甲状腺ホルモン)の過剰分泌により高Ca血症となることがある。
- REC講師による詳細解説! 解説を表示
-
問226 解答 3、5
選択肢のうち、カルシウムのほかに摂取する成分として優先度が高いのは、ビタミンDとビタミンKである。
ビタミンDは、体内で活性型ビタミンDに代謝されることで、血中のビタミンD結合タンパク質と結合し、標的組織に運ばれて細胞に取り込まれた後に、核内の受容体に結合して遺伝子の発現を亢進する。その結果、小腸ではカルシウム結合タンパク質の生合成が促進され、カルシウムの吸収が促進される。ビタミンDが不足すると、骨や歯の発育が不良となり、幼児ではくる病、成人では骨軟化症といった欠乏症が現れる。
ビタミンKは、骨基質タンパク質であるオステオカルシンのグルタミン酸残基のγ-カルボキシル化反応の補酵素として作用し、骨形成に関与している。
問227 解答 3、4
骨は、常に骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収を繰り返して再構築(リモデリング)を行っている組織である。骨量は、骨芽細胞と破骨細胞の機能的平衡状態により維持されている。
1 誤
エストロゲンは、カルシトニン分泌を促進することで骨からのCa2+遊離(骨吸収)を抑制する。
2 誤骨細胞は、骨芽細胞に骨基質が埋め込まれた細胞であり、骨組織において最も多く存在する細胞である。骨細胞は細胞分裂を行わないため、増殖能を持たない。また、骨芽細胞も細胞分裂を行わないため、増殖能を持たない。なお、骨芽細胞を形成する骨形成細胞は、間葉に由来した未分化細胞であり、増殖能を有する。
3 正
骨芽細胞は、Ⅰ型コラーゲン、オステオカルシン、ヒドロキシアパタイト、アルカリ性ホスファターゼなどを分泌して骨基質をつくる。
4 正
カルシトニンは、甲状腺傍ろ胞細胞から分泌されるペプチドホルモンであり、破骨細胞の働きを抑制することで骨吸収を抑制し、骨基質へのCa2+の取り込みを促進して骨形成を促す。
5 誤
負荷がかかる運動は、骨芽細胞を活性化することで骨形成を促進させ、骨量を増加させる。
問228 解答 4、5
1 誤
血清アルブミン濃度の基準値は3.8〜5.3 g/dLであるため、この女性は低アルブミン血症である。血清中のCaの約40〜50%はアルブミンと結合しているため、低アルブミン血症の患者では血清Ca濃度の正確な評価が困難となる。よって、低アルブミン血症の患者では、補正血清Ca濃度を用いることによってCa濃度を評価する。
2 誤
補正血清Ca濃度(mg/dL)は本問の計算式より以下のように計算できる。
補正血清Ca濃度(mg/dL)=10.0 mg/dL+[4-(3.0 g/dL)]
=11.0 mg/dL
補正血清Ca濃度の基準値は8.4〜10.2 mg/dLであるため、この女性は高Ca血症であると判断される。
3 誤
血中のCaの約半分はタンパク質(主にアルブミン)と結合して存在し、残りの約半分はイオン化した遊離Caとして存在する。血中Caとしては、イオン化Caが生理的に重要であるが、イオン化Caを効率よく安定して測定することが困難であるため、一般には総Ca濃度が測定される。なお、低アルブミン血症の場合は補正血清Ca濃度を測定し、著しくアルブミン濃度が低い場合には、イオン化Ca濃度を測定することが推奨される。
4 正
この女性は高Ca血症である。高Ca血症の症状として、脱水、倦怠感、悪心・嘔吐、筋力低下、意識低下、腎機能障害などがあるため、この女性はこれらの症状を起こしやすいと予測される。
5 正
活性型ビタミンD3製剤(カルシトリオールなど)は、腸管においてCaの吸収を促進し、腎臓においてCaの再吸収を促進することで血清Ca濃度を上昇させる。副作用として高Ca血症が現れることがあるため、本剤は患者の血清カルシウム濃度の十分な管理のもとに投与量を調節する必要がある。
問229 解答 2、5
1 誤
Caは生体内で最も多く存在する無機質で、99%がヒドロキシアパタイト(リン酸カルシウムの一種)として骨や歯といった硬組織中に存在する。
2 正
オステオカルシンは、骨芽細胞が分泌する骨基質タンパク質であり、ビタミンK依存性カルボキシラーゼによってグルタミン酸残基がγ-カルボキシル化を受けると、Ca結合能を獲得し、ヒドロキシアパタイトを吸着する。
3 誤
カゼインホスホペプチド(CPP)は、Caが腸内でリン酸イオンと不溶性塩を形成するのを抑制し、腸管からのCa吸収を促進する。
4 誤
シュウ酸やフィチン酸は、Caと不溶性塩を形成するため腸管からのCa吸収を阻害する。
5 正
パラトルモンは、副甲状腺(上皮小体)から分泌されるペプチドホルモンであり、骨吸収促進作用や腎臓におけるCaの再吸収促進作用をもち、血中Ca濃度を上昇させる。よって、パラトルモンの過剰分泌により高Ca血症となることがある。
-
解説動画1 ( 10:33 )
-
※ この解説動画は 60 秒まで再生可能です
再生速度
|
|
- この過去問解説ページの評価をお願いします!
-
評価を投稿