薬剤師国家試験 平成30年度 第103回 - 一般 実践問題 - 問 232,233
75歳女性。肺炎にて入院後、喀痰検査にてMRSAが原因菌と判断された。バンコマイシンにて治療を開始したが改善が認められず、アルベカシンに変更した。変更後も治療効果が認められず、さらに腎機能も低下していたことから、他の薬物の選択をICT(感染制御チーム)で検討することになった。
問232(実務)
薬剤師が提案する薬物として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1 タゾバクタム・ピペラシリン
2 シプロフロキサシン
3 メロペネム
4 クリンダマイシン
5 リネゾリド
問233(衛生)
MRSA及びその感染症に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 感染症法*において、特定の職業への就業によって集団発生を起こし得る感染症とされている。
2 感染症法*に基づき、患者は状況に応じて第二種感染症指定医療機関に入院しなければならない。
3 消毒薬として、消毒用エタノールや次亜塩素酸ナトリウムが有効である。
4 院内感染を起こす代表的な細菌であり、院内の耐性菌として検出される細菌のうち最も大きな割合を占めている。
5 外来患者から検出される黄色ブドウ球菌のうち、MRSAは80%以上を占める。
*感染症法:感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
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問232 解答 5
MRSAを起因とする肺炎に適応があるのは、バンコマイシン、テイコプラニン、アルベカシン、リネゾリドである。このうち、バンコマイシン、テイコプラニン、アルベカシンは、未変化体が尿中に排泄されるため、腎機能が低下している患者に投与する場合は、患者の腎機能に応じて用法・用量の変更を行う必要がある。本患者はMRSAに起因する肺炎に罹患しており、腎機能も低下していることから、薬剤師が提案する薬物として、リネゾリド(選択肢5)が最も適切である。
問233 解答 3、4
1 誤
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染症は、感染症法における5類感染症である。5類感染症とは、国が感染症発生動向調査を行い、その結果に基づいて必要な情報を一般国民や医療関係者に提供・公開していくことによって、発生・拡大を防止すべき感染症である。なお、特定の職業への就業によって集団発生を起こし得る感染症とされているのは、3類感染症である。
2 誤
5類感染症であるMRSA感染症は、入院勧告の対象とはならない。第二種感染症指定医療機関に入院しなければならないのは2類感染症である。
3 正
MRSAに有効な消毒薬には、消毒用エタノール、次亜塩素酸ナトリウム、グルタラール、ポビドンヨード、フェノール、クレゾールなどがある。
4 正
院内感染する耐性菌として検出される細菌のうち、最も大きな割合を占めているのは、MRSAである。MRSAの他に院内感染を引き起こす代表的な耐性菌として、バンコマイシン耐性陽球菌(VRE)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)などがある。
5 誤
外来患者から検出される黄色ブドウ球菌のうち、MRSAは10〜30%程度を占める。
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