薬剤師国家試験 平成30年度 第103回 - 一般 実践問題 - 問 290,291
74歳男性。喘息にて近医から下記の薬剤(処方1及び処方2)が処方されていた。呼吸困難を自覚しており、禁煙したにもかかわらず、症状が改善しないため、呼吸器内科を受診したところ、新たにCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と診断され、追加の処方(処方3)が行われた。
問290(実務)
吸入剤の服薬指導に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 加圧式定量噴霧吸入器は吸気と噴霧の同調が必要でないため、任意のタイミングで吸入するように説明する。
2 ドライパウダー吸入器は自己の吸気で吸入を行うため、十分な吸気力があるかを確認する。
3 吸入薬は、内服薬と同等の全身性の副作用があると伝える。
4 吸入指導を行う場合は、口頭説明だけではなく、吸入練習器具を用いて実践させることが望ましい。
5 喘息発作時にはオルベスコを使用するように伝える。
問291(病態・薬物治療)
本患者の肺機能検査の結果、以下のような検査値が得られた。また、緑内障を合併していないことを確認した。本患者の病態及び薬物治療における注意点としても正しいのはどれか。2つ選べ。
努力肺活量(FVC)2.72 L(予測値:2.98 L)、1秒量(FEV 1. 0)1.42 L(予測値:1.86 L)、PaO2 75 Torr、PaCO2 46 Torr、血液pH 7.37
1 可逆性の換気障害が特徴的である。
2 50% ≦ %FEV< 80%であるので、病期はⅡ期中等症である。
3 処方3の薬剤を使用するにあたって、排尿障害があるか否かを確認する必要がある。
4 感染の重症化を防ぐため、インフルエンザワクチン及び肺炎球菌ワクチンを年1回、接種するように指導する。
5 在宅酸素療法の適応となる。
- REC講師による詳細解説! 解説を表示
-
問290 解答 2、4
1 誤
加圧式定量噴霧吸入器は、容器に入った噴射剤により薬剤をエアゾールとして噴射する吸入剤であり、吸気と噴霧の同調が必要なため、薬剤噴射のタイミングに合わせてゆっくり吸入するように説明する。
2 正
ドライパウダー吸入器は、充填された固体粒子をエアゾールとして自己の吸気で吸入を行う吸入剤であるため、十分な吸気力があるかを確認する必要がある。
3 誤
吸入薬は、局所作用を目的とした剤型であり、内服薬と比べて全身性の副作用は少ないことを伝える。
4 正
吸入薬は、吸入方法を理解せず手技を誤ると十分な効果が得られず、副作用の発現などにつながるおそれがある。そのため吸入指導を行う場合は、口頭説明だけではなく、吸入練習器具を用いて実践させ、しっかりと吸入方法を理解させることが望ましい。
5 誤
オルベスコ(シクレソニド)は、副腎皮質ステロイド性薬であり、気道の慢性炎症を改善することで、気管支ぜん息の長期管理に用いられる薬剤(コントローラー)である。喘息発作時に使用する薬剤(リリーバー)ではない。
問291 解答 2、3
1 誤
慢性閉鎖性肺疾患(COPD)は、タバコの煙などの有害物質を長期間吸入曝露することで生じる肺の慢性炎症性疾患であり、不可逆的な換気障害が特徴的である。
2 正
COPDの病期分類は、下記の対標準1秒量(%FEV1)により分類される。
Ⅰ期(軽度):%FEV180%以上
Ⅱ期(中等度):%FEV1 50〜80%
Ⅲ期(高度):%FEV1 30〜50%
Ⅳ期(極めて高度):%FEV1 30%以下
なお%FEV1は、健常人の1秒量の予測値に対する患者の1秒量の実測値の比率である。
そのため、本患者の%FEV1は、
1.42 L/1.86 L × 100 ≒ 76.3%となるため、本患者の病気分類はⅡ期(中等度)である。
3 正
処方3のチオトロピウム臭化物水和物は抗コリン薬であり、前立腺肥大症などの排尿障害を悪化させるおそれがあるため、使用する際には排尿障害があるか否かを確認する必要がある。
4 誤
COPD患者では、感染の重症化を防ぐために、インフルエンザワクチンは年1回、肺炎球菌ワクチンは5年に1回接種するように指導する。
5 誤
在宅酸素療法は、重症例(PaO2 55 Torr以下、またはPaO2 60 Torr以下で睡眠時または運動負荷時に著しい低酸素血症をきたす患者)で適応となる。本患者のPaO2は75 Torrであるため、在宅酸素療法の適応とはならない。
- この過去問解説ページの評価をお願いします!
-
評価を投稿